こんにちは、コサコです。
わたしは病院業界とIT業界で働いた経験があり、業界による人事制度の違いに戸惑うことがあります。
戸惑いのひとつが、病院業界は給与と役職が連動しているということ。つまり、プレイヤーとして優秀な場合、評価され給与をあげるにはマネジャーに昇格するしかなく、プレイングマネージャーにならざるを得ません。
一方IT業界では、マネジャーにならなくても、プレイヤーとして評価され、給与を上げ続けることが可能です。なぜなら、優秀なソフトウェアエンジニアは、平均的なエンジニアの10,000倍の価値を産むことができるとも言われているからです(参照:Netflix CEO Reed Hastings on high salaries: 'The best are easily 10x better than average')。
この違いは、業界の構造上の違いによるものから来ていると考えられます。医療機関という労働集約型産業は、いくら優秀で効率的に働いても、おそらく5倍の価値を産むのが限界です。
労働集約型の構造の場合プレイヤーとしての価値を束ねてもらうより、人を束ねてより多くの価値を産むんでもらうほうが、人事制度のメンテナンスも効率的です。
さて、この病院業界の人事制度を考えると、わたしたちはマネジャーにならないと給与を上がらないということを受け入れないといけません(年次による昇給もありますが)。
優秀なプレイヤーである自覚のある人は、いつかマネジャー業務が回ってくることに対して準備しておく必要があります。
そもそもマネジャーの役割とは?
インテル元CEOのアンディ・グローブは、著書「High Output Management」の中で、マネジャーのアウトプットを以下のように定義しています。
マネジャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット
(参照:https://amzn.to/3edNgU0)
中小企業など組織の規模が小さくなるほど、中間管理職が他の部署から頼まれる仕事に対して、「これ以上仕事を受けることはできません。」とネガティブな反応をすることが少なくないと聞きます。
ただ、アンディ・グローブの定義を拝借すると、他の部署(影響力が及ぶ部署)のアウトプットまでを考えて、組織運営をするのがマネジャーの役割と言えます。
マネジャーのアウトプットを最大化するには?
マネジャーの仕事の管理業務は、2つに大きく分けられます。
- 労務管理
- 人事管理
です。
労務管理とは、
組織を対象とした働く環境を最適にするための管理。すべての社員が働きやすい環境を作るために行動します。
人事管理とは、
社員一人ひとりを対象とした管理。(中略)「ヒト」の管理を行うのが人事管理の仕事で、採用や人員配置、人事評価を適切に実施し、把握します。
(参照:人事労務管理とは? 人事管理と労務管理の違い、業務内容、人事労務管理システムについて - カオナビ人事用語集)
マネジャーのアウトプットを最大化するには、労務管理と人事管理のバランスを考えながら、最適化のポイントを探る必要があります。
筆者が考える労務管理と人事管理の関係を図にしました。問題の発端となりやすい「業務量」を中心に図にしました。
上記で述べたマネジャーのアウトプットの中で、「自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット」を初めから考えるのは難しいかもしれません。
「自分の組織のアウトプット」が最大になるように
- 業務量を考えましょう。
- アウトプットが最大になるよう、業務を棚卸しをします。
- 棚卸しをすると、自組織だけで完結する業務と隣接諸組織に影響する業務が出てきます。
- 自組織で完結する場合は、スタッフのスキルアップや配置換えで、業務改善を行います。
- 隣接諸組織に影響する場合は、マネジャーとして他組織のマネジャーと、どうすればお互いのアウトプットが最大化になるか話し合います。
- 組織のアウトプットの最大化を目指すと、たいてい新しい仕事が生まれます。それを自組織の誰に振るかによって、組織を一段と成長させられます。
マネジャーに起こりがちな問題
先にも述べましたが、
中間管理職が他の部署から頼まれる仕事に対して、「これ以上仕事を受けることはできません。」とネガティブな反応をする
という問題。この場合は、1の「業務量を考える」部分で止まっていて、業務の棚卸しをしないまま、マネジャーの役割を放棄しているとも言えます。
自身がマネジャーの場合、マネジャーのアウトプットの定義に立ち返ると、隣接諸組織と一緒に業務の棚卸しをすることが「これ以上受けることができない」問題を解決するソリューションのひとつだと考えています。
終わりに
今回は、マネジャーのアウトプットと、管理の基本業務「労務管理」と「人事管理」について記事にしました。
マネジャーになると、業務を中心とする話の他にも、ハラスメントやキャリアについてなど一筋縄では行かない問題も出てきます。
問題が起こる前に準備をして、常に業務を棚卸しをし、人の成長を考えながら仕事をアサインし、他部署との連携を欠かさないこと。これらの基本的なことを常に行うことが、マネジャーのアウトプットを最大化させると考えます。
これを機に、自身や自分の上司の「労務管理」と「人事管理」について考えてみるのは、いかがでしょうか?
--筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に関わる。並行して一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。2019年よりグループ病院経営企画部に転職し、病院のデジタルトランスフォーメーションに従事。