Healthcare Compassを運営しているコサコです。
久しぶりに新サービスのご紹介です。その名も
はじめに
医療機関を経営するにあたり、診療報酬制度の中で医療を提供しようとすると、薬の納入価格は意識せざるを得ません。
なぜなら、薬価は患者に処方したり調剤する際には薬価基準で定められた価格で患者に提供する必要がありますが、薬の納入価格は製薬会社や卸が自由に設定することができるからです。
つまり、薬をいかに安く仕入れるかによって、少なからず医療機関の利益に影響を及ぼします(その利益を薬価差益と言います)。
もし自分が経営者として、他の医療機関より高く医薬品を仕入れていると知ると。。。夜も眠れなくなるかもしれません。
医薬品納入価格査定サービスとは
他の医療機関と比べて、自分のクリニックはどのくらい高く(もしくは安く)医薬品を仕入れることができているかを知れるのが、「医薬品納入価格査定サービス」です。
サービスを運営している吉野さんにコンタクトをして実際のサービス内容について伺いました。
誰が作ったのか?
慶應義塾大学経済学部3年吉野光さんが中心となって作りました。
吉野さんのお姉さんが看護師であることや、ご友人の兄弟が医師であることがきっかけとなってこのサービスを作ったそうです。
どんなデータが返ってくるの?
1年分の請求書を提出すると、以下のデータがSpreadsheetで返ってきます。
1枚目:概要
2枚目:高く買っている品目と差額
3枚目:安く買っている品目と差額
こんなに丁寧なデータが返ってくるのは、素晴らしいですね。
どうやってデータを送るの?
これだけ詳細はレポートをもらうには、どんなデータが必要かを吉野さんに伺いました。
必要なのは、
- 1年分の請求書データ
です。
データを送る方法は、以下の3つ。
- 医薬品卸様に請求書をデータ化してもらい、アップロードする。
- 卸からの請求書をFAXする。
- 卸からの請求書を写真にとってメールする。
データを送ると、2〜3日で結果が返ってきます。
いくらかかるの?
現在は、無料で提供しています。
気になること
現在は大学生とのことで、無料で提供していても問題はなさそうですが、いくつか懸念がありましたので、吉野さんに訊いてみました。
---
吉野さん大学卒業のタイミングで事業売却、売却先がサービス有料化することはないですか?
医療機関がコストカットできた分の一部をプロフィットシェアすることでマネタイズをする予定なので、有料化の予定はありません。
長期的に本サービスが市場を席巻して、卸の利益を逼迫する可能があります。取り扱える品目が少なくなったり、そもそも小さいクリニックほど交渉の余地がなくなることもあるのではないでしょうか?
長期的なこのサービスの発展について、卸に対して業務合理化の提案を同時にしているため、卸にとってもメリットのあるサービスにしていきます。
---
まとめ
今回は、無料で医薬品の納入価格が適正かどうかを調べられる新サービス「医薬品納入価格査定サービス」についてご紹介しました。
クリニック経営にとって薬価差益は、利益を占める割合の重要な一部です。
2021年4月時点では無料で提供されているサービス。クリニックを経営されている方は、一度納入価格を査定してみてはいかがでしょうか。
最後に筆者個人の認識では、卸というのは上流から下流の間のビジネスのため、競争が激しく薄利多売になりやすい構造です。反面、下流に位置する医療機関は、最終的に言われた価格で買わざる得ない状況も存在します。
ただでさえ厳しい卸業界において、今後、必要不可欠な薬は薬価より高く納品するという可能性もあるので、今後の動きに注視したいと思います。
--筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に関わる。並行して一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。2019年よりグループ病院経営企画部に転職し、病院のデジタルトランスフォーメーションに従事。