病院経営ウェブマガジン“Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)”

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Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

救急外来SaaSの超新星「Next Stage ER」について調べました

こんにちは、Healthcare Compassのコサコです。コロナ禍で本業に集中していて、前回から随分と間が開いてしまいました。

さて、多くの反響を頂いた前回の「病院向けクラウドサービスにもっと参入してください 」で、クラウド/オンプレ、専用/汎用の4つの象限で、病院業界で現在使われているプロダクトを紹介しました。

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この区分けに対して、「救急外来領域でダントツの導入数を誇るSaaSプロダクトが入ってない!!」と知り合いのVCの方から連絡をいただきました。

話を聞いてみると、その導入実績は18病院。導入内定をいれると29病院の救急外来で導入が予定されているそうです(2020年8月時点)。
そして、導入されている病院は、どれも救急車受け入れ台数が各県のトップレベル。

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その名も、「Next Stage ER」。

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SaaSと言っても、日本の病院の電子カルテはほとんどがオンプレミスのプロダクトです。この課題を解決すべく、Next Stage ERは、オンプレミスとクラウドと病院の部門システムを連携する、とても業界フレンドリーなSasSを提供しています。

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今回は、Next Stage ERの資料をご提供いただいたので、救急外来領域でどの機能が評価されているのかを記事にしていきます。

 

Next Stage ERの機能1:救急外来のホワイトボードを再現

病院で働いていて、救急外来に足を踏み入れたことがある方なら誰もが目にしたことがあるのが、ホワイトボードでしょう。

基本的に救急外来は忙しそうなことが多く、私も「あのホワイトボードは何ですか?」とのんびり訊くわけにもいかず、これまで社会人人生を歩んできました。

その謎に満ちたホワイトボードを、ITプロダクトとして再現しているのが、Next Stage ERの機能その1なのです。

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大きなモニターを導入して、救急外来の真ん中に電子化されたホワイトボードが設置されているのを想像してみてください。

実際、医療現場で紙の文化が根強く残る理由として、一覧性が挙げられることがあります。Next Stage ERでは、SaaSプロダクトの導入の障害になる部分を、核の機能として据えているのが大きな特長です。

ちなみにホワイトボード裏側の、ベッドマップもしっかり実装されています。

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Next Stage ERの機能2:テキスト記載を自動で標準化してDBに格納

救急外来の領域は、その忙しさ故、学術研究のためのデータのクレンジングに膨大な時間を費やしてしまいます。

データ解析するチームを有する病院であっても、病院中の部署からの依頼の中で、救急領域の学術発表用のデータクレンジングに付き合ってくれるところはなかなかありません。

結果的に、医師が夜な夜な(少ない)睡眠時間を削って、データ分析の前処理をする必要があります。

その状況を、Next Stage ERは打破してくれます。その機能とは、「テキスト自動標準化」機能です。

特許申請中のテキストコーディング技術により、テキスト記載は自動で標準化されてデータベースに格納されます。このため、短時間に記録業務の遂行と検索・研究用データ収集を同時に実現します。

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病院としての救急外来の質をあげていくためにも、医師が研究しやすい仕組みや専門医のための症例収集体制を整えるのも経営のひとつです。Next Stage ERを筆頭に、将来的に「電子カルテを補完するSaaSが導入されていない病院では、研究のスピードが落ちるので働きたくない。」という日も来るかもしれません。

 

Next Stage ERの機能3:どの電カルテメーカーでも導入可能、カルテ記載はコピペのみ

ここまで来ると、導入のハードルになってくるのは、既存電子カルテとの連携。冒頭に述べたとおり、日本の病院の電子カルテはほとんどがオンプレミス。
Next Stage ERは、オンプレ電子カルテとの連携を「テキストのコピー&ペースト」で実現しています。

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簡単にシステムの構成図を表すと以下の通りになります。

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あえて、コピペにすることで、どんな電子カルテとも組み合わせを可能にしています。つまり、コピペするだけで医師法に定められた診療録記載を満たすことができます。

また、かゆいところにも手が届く設計になっていて、基本機能として電子カルテ側の患者情報をNext Stage ERに送る仕様になっています。

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ここまで、医療者にとってNext Stage ERがいかに便利な機能を持っているのかについて、述べてきました。

小休憩を挟んで、このプロダクトのオペレーション上の強みについても書いていきます。

 

小休憩

私は、フジテレビのドラマ「救命病棟24時」のシーズン3(2005年)がとても好きでした。主題歌の「何度でも」には、人生で落ち込んだとき、幾度となく助けられました。

 

ドラマでもよく描かれますが、救急外来はスピードが命です。
例えば、循環器の疾患で運ばれた場合は、手術室に運ばれる時間が鍵と言われています(日本病院会のQIプロジェクトでも「No.22 急性心筋梗塞患者の病院到着後 90 分以内の初回 PCI 実施割合」という項目があるほほどです)。
参照:https://www.hospital.or.jp/pdf/06_20191120_01.pdf

 

Next Stage ERの機能4:病院のID発行前から、記録を始められる

さて、機能紹介に戻ります。先程、救急はスピードが命と述べましたが、実は電子カルテがスピードの障害になることもあります。

それは、病院のIDの採番です。大型の電子カルテを導入している病院では、同時に大きなレセコンと組み合わせてIDを採番しているところが多いと思います(他のケースを知りませんが・・・)。このIDの採番、どの病院も気をつけているのが2重登録。

患者の記録を一度記載してしまうと、カルテを消すことができない取り決めがあるので、過去に受診したかを病院事務は慎重に見極めて、IDを採番する必要があります。

その運用に対して、ひとつのソリューションを提示しているのも、Next Stage ERです。
ID未定の状態で、Next Stage ER上に先に情報の記載を始めることができます。そして、ID確定後に情報を電子カルテに記録することが可能です。

交通多重事故で救急車が連続でやってくる場合、氏名不詳での治療が複数同時に発生します。そんな事象に対してシステムがボトルネックになることなく、記録を始められるのは運用上とても重要なことです。

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別で用意する「救急隊用アプリ」や「ウォークイン患者用の問診アプリ」を用いれば、QRコードの読み込みのみで、Next Stage ER上に記録を転記することも可能です。
QRコードを用いることで、病院のネットワークと連携させなくても情報を送ることを可能にしているので、病院のシステム室にとっても嬉しい機能です。

 

どんな人が開発しているのか?

こんな現場に寄り添ったプロダクトをどんな人が開発しているのでしょうか?
代表は、東大医学部卒で救急科専門医・集中治療専門医の園生智弘医師。

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WEB会議でしかお話ししたことがないですが、非常に聡明で、IT技術にも明るく、とてもアツい人です。この方に営業されると、心を動かされてしまうなぁと感じました。

 

Next Stage ERに期待すること

冒頭から、Next Stage ERはSaaSである、と書いてきましたが、実は病院の運用に合わせて病院の中にサーバーを置いて、オンプレとクラウドを使い分けているとのこと。
代表の園生氏いわく「もちろんクラウドで行けるならすべてクラウドにしたいですが、業界の現状を考えるとオンプレの選択肢を持ちながら、徐々にクラウドにしていくのが大事だと思っています。」とのこと。

Next Stage ERが救急外来のデファクトスタンダードになり、電子カルテメーカーを動かして、クラウドとオンプレをAPIベースで接続できる世界を期待しています。

 

まとめ

今回は、前回の記事「病院向けクラウドサービスにもっと参入してください 」をきっかけに情報をいただいた、救急外来SaaSの超新星「Next Stage ER」について紹介しました。
Next Stage ERの大きな特長は4つ。

  1. 救急外来のホワイトボードを再現していること
  2. テキスト記載を自動で標準化して、学術研究にも使いやすい加工をしていること
  3. カルテメーカーに限らず導入可能であること
  4. 病院のID発行前から、記録を始められること

電子カルテがオンプレメインだからなかなか参入できないなぁと嘆くわけでもなく、オンプレとクラウドを繋ぐ部分も含めて救急業界に新風を巻き起こしているNext Stage ER。
今後の活躍に期待しています。

Next Stage ERを開発するTXP Medical株式会社は、積極採用中とのこと。Wantedlyの募集以外にも、腕に自信のある方は連絡してみてください。

https://www.wantedly.com/companies/company_2739084/projects

 

--筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に関わる。並行して一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。2019年より亀田総合病院経営企画部に転職し、亀田京橋クリニックを担当。