漠然とした不安
「この調整の延長には何が待っているのだろうか?」
そういう不安に取り憑かれたことはありませんか?
部長と課長の間を取り持ったり、部長同士が納得いく提案を考えたり。
社内の人間関係にも詳しくなり、決裁プロセスも覚えてきた。でも仕事ができるようになった実感はなく、社内ドラゴンクエストの冒険感もなくなってきた。
「これってスキル?ただ調整してるだけ?外に出て、活躍できるんだろうか?」
組織では意思決定者が決定内容を明確にしなかったり、案件に対して複数の意思決定者が存在したりして、度重なる「調整」業務をせざるを得ないことがあります。
病院事務は、海外ではadminと言われている
先日、こんなツイートを見かけました。
就活生が誤解しがちなのは、外資系のフロント・バックという分かれ方は、日系企業の総合職・一般職の分かれ方は少し違う、ということ。
— 外資系ワーママ (@workingmomjp) 2020年4月26日
日系企業では一般職がプロモーションして管理職にはなることは基本的にないようですが、外資系ではバックオフィスのスタッフもプロモーションして管理職になる。
基本的に同じ認識で、バックオフィスも頂点をCAOとした専門職。ただ、この前銀行の大阪時代の同僚と10何年ぶりに集まったら、当時の一般職のお姉さまが2名、本店に事務解る管理職が居ないから単身赴任で課長やってんねんと言ってて、最近はそんなんがあるんだなと思った。
— ボヘカラ (@BOHE_BABE) 2020年4月28日
ツイートの文脈はさておき、
CAOという言葉が気になり調べてみると、Chief Administrative Officer、最高総務責任者 の意味だそうです。
admin仕事にChiefという役職がつくのは、さすが外資系企業だと感心しました。
Administrativeという言葉で病院経営と関連することといえば、海外の方と仕事をしたり病院事務の海外での仕事を探したりするとき、"hospital admin" と言います。
adminとは、「運営している人」「経営している人」です。
病院経営において事務方の頂点には、事務長や事業管理部長がいる組織が多いですが、adminという用語からCAO(Chief Administrative Officer)と捉えるとスッキリすると感じました。
adminは調整仕事が多い
実際、病院のadminとして働くと、調整仕事は山のようにあります。
調整仕事が多くなってしまうのは、必然だと私は思っています。
そもそも病院は、医療職の人々が医療行為を行うことによって「売上」をあげられる構造なので、医療職の方には医療の提供に集中してもらい、adminが周りの環境を整えることが理にかなっています。その分、病院のadminは部署の職務の定義があいまいで、さらにできる人に調整仕事が寄っていってしまう現実もあります。
調整仕事をタスク化して、DONEしていく
調整仕事をこなしていると、ときに「あれ?今日何してたんだっけ?」と思うことも少なくありません。「私のアウトプットはなんだったのか?」と。
私自身が調整仕事を行う上で大切にしているのは、調整をタスク化してDONEしていく意識を持つことです。
意識だけじゃなく、「この調整はこの日の午前中に終わらせる」「調整が完了したら、メールを出す」という風にステップを細分化してスケジュールに登録しています。
タスク化してDONEしていくというのは、デビット・アレンの提唱したGetting Things Doneを参考にしています。
調整仕事のコツは、調整をタスク化してスケジュールに組み込みDONEしていくことです。
調整の仕事は2つの役割が求められる
最後に、最近、他の医療機関の先輩に教えてもらった調整仕事の2つの役割について紹介します。
その役割とは、
- Adjuster:調整する人、調停人
- Fixer:まとめ役、仲介者、調停者
です。2つとも日本語にすると似たような意味になってしまいますが、私個人の解釈としては、
- Adjuster:2者以上のステークホルダーの利害の不一致や見解の不一致について、お互いが納得行く形で話を成立させる人
- Fixer:2者以上のステークホルダーの利害の不一致や見解の不一致について、納得感は二の次に、案件の結論を出すため(被害を最小限に留めるために)話を成立させる人
というイメージです。
もちろん一流のFixerは、お互いWin-Winの形で案件を終わらせることができそうですが、Fixerという役割が求められる時点でステークホルダーのうちの誰かは損をする形にならざるを得ないと思います。
医療機関の調整仕事のうち、役割として求められるのは
Adjuster:Fixer=10:1 くらいの割合で、基本的にはステークホルダー間の納得の上で物事を進めていくことがほとんどです。
逆に10回に1回の、何が何でも終わらせなければならない(Fixしなければならない)状況でFixできない場合、次からFixの仕事が回ってこなくなるというのが私の印象です。
最後に
今回は、病院のadminとして働いている際にどうしても求められる調整仕事について書きました。
まとめると
- 外資系の会社には、Chief Administrative Officer、最高総務責任者という役職があるくらいadminは大切。
- 病院のadminが、調整仕事が多いのは当たり前。
- その中で、調整をタスク化してスケジュールに組み込みDONEしていく。
- 求められる役割が、Adjusterなのか、Fixerなのか、を意識する。
ただただ調整の仕事を請け負うのではなく、スキルとして昇華するには仕事としての認識を設定するのが大切だなと思うところがあり、調整業務について文章にしました。
--筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に関わる。並行して一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。2019年よりグループ病院経営企画部に転職し、病院のデジタルトランスフォーメーションに従事。