病院経営ウェブマガジン“Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)”

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Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

2020年診療報酬改定予測!答申内容を解説します

今年も2020年の診療報酬改定に向けて、中医協から答申内容(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000193003_00002.html)が出ました。

医療機関の管理部門の方はもちろんのこと、医療機関向けビジネスを展開する企業のみなさんにとっても要チェックな内容となりました。ぜひご確認ください!

また、診療報酬の改定は以下の流れとなっており、この答申内容を厚生労働省が確認し、最終的な改定内容となります。つまり、改定内容はまだ本決まりではなく、ここから追加や削除も入る予定です。

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(引用:https://www.iryoken.co.jp/contents/report/report_11.html

大前提として、2020年の改定方針は本体部分を0.55%引き上げ、薬価(市場拡大再算定の見直し等を含む)を0.99%、医療材料価格を0.02%引き下げという方針です。その上で、本体部分の引き上げ0.55%のうち0.08%を「救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」に充て、残りの0.47%を各科に配分し、医科が+0.53%、歯科が+0.59%、調剤が+0.16%という方針になっています。

どこにどれくらいお金を使いますよ、という配分方針ですね。

 

【ダイジェスト版~通勤時間で読める、改定内容概要編~】

今年の改定内容は大きく、以下の2軸に重きを置いた内容となっています。
 ①医師の働き方改革
 ②病床再編

どちらも多くの財源を充てています。

①に関しては他職種へのタスクシフティングと地域医療体制に関する各種要件緩和・追加。

②に関しては、急性期病床を持ちつつも患者の重症度が下がってきている病院はこれまで取得できていた入院料や管理料の算定要件を満たすことが難しくなり、収益的により苦しい状況となるような内容となりました。

②の病床再編について掘り下げると、ICUを持つ医療機関のうちA項目での看護必要度が取れない患者が増えている施設等は地域での立ち位置を見直す必要性がより増し、病院側は地域に何を貢献していくのかを検討するよう、かなり追い込まれる状況となっています。思い返すと昨年は厚生労働省から病院の合併・再編成を求める病院一覧(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000551037.pdf)も発表された流れからも見て取れます。

また、今回の改定の基本方針(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000592925.pdf)も定められています。
今回はこの方針に沿った改定がなされることとなります。

それでは、改定内容を細かく解説していきます。

 

【改定内容解説~本編~】

今回は、改定内容の傾向に合わせて、以下の3つに分類し、解説します。

  1. 急性期病院のあり方
  2. 医師の働き方改革
  3. その他

 

1.急性期病院のあり方

今回の改定は救急医療を担う急性期病院にとっては嬉しい改定内容となりました。
ただし、”きちんと救急医療をやっている病院に限り嬉しい内容です。"きちんと"とは国が「急性期の救急医療で診てほしい患者(=重症度が高い患者や看護必要度のA項目をいくつも満たす患者)」を診ていることを指し、そのような病院は、それを診療報酬上でも評価してもらえるような改定内容となりそうです。

それでは個別の抑えておくべき項目をさらっていきます。

p.30⑥ 特定集中治療室管理料の見直し

また、特定集中治療室の入院患者の適切な評価を行う観点から、入院 患者の生理学的スコア(SOFAスコア)の提出を要件とする入院料等 を見直す。 

これにより医療機関でICUに入室しているすべての患者(熱傷患者以外)の重症度が確認・比較できるようになります。

いままでは特定集中治療室管理料1及び2の必須要件とされていたSOFAスコア(全身の臓器障害の度合いを表す指標の一つ)ですが、今回の答申で特定集中治療室管理料3および4にも必須要件とする旨が出ました。ただし、SOFAスコアの記録は医療従事者への負担も増えるので、医事課と医療従事者の連携はさらに必要となりそうです。

アウトカム次第ですが、集中治療の遠隔管理やそれに合わせた要件追加を考えるきっかけになりそうです。

個人的な予測ですが、今後はSOFAスコアを項目として、一定の値を超えないと入院料や管理料を算定できない、という流れが発生してきそうだと捉えています。

p.310③ 重症度、医療・看護必要度の 評価項目及び判定基準の見直し

今回、A項目の日数延長および項目追加が顕著に進みそうです。その影響もあってか、B項目に関する重症患者判定の要件が削除となる予定です。A項目およびC項目を満たせる施設であれば必然的にB項目も満たすであろう、であればまとめます、という方向性の布石のように感じました。

個人的にはB項目がなくなるとICU入室要件を満たせない施設も多くあるのではと感じますが、やはり"きちんとした"急性期病院には痛手の少ない改定内容です。

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p.199⑩ 救急医療管理加算の見直し

こちらも救急領域を担う急性期に関連する内容です。

救急領域はより手厚く評価する体制が整う答申内容でしたが、代わりに"きちんと"救急をやっていること証明する記録が増えることとなります。各病院で電カルフォーマットがまた増えそうな予感ですね。

番外編~急性期病院関連~

p.320⑧ 特定集中治療室での栄養管理の評価

ICUで48時間以内の管理栄養士介入評価をした場合、7日を限度に1日400点の加算となっています。ICU患者の早期栄養管理開始は予後にも貢献すると言われています。

個人的にはこのようなcureと診療報酬が同じ方向を向くような改定内容は素晴らしいなと思います。

p.201⑫ 超急性期脳卒中加算の見直し

rt-PA(脳梗塞の超急性期治療方法である"アルテプラーゼ療法")の超急性期脳卒中加算の要件が緩和、ただし減点方針、となっています。rt-PAの普及は進みそうですが、医療の質を含めたアウトカム評価の確認が必要になりそうな項目です。

長期的には・・・

また、これまで急性期病院の転換先としては地域包括ケア病床も選択肢になっていましたが、転棟が6割を超えると入院料が1割減になる方針もあり(p.322 ⑨ 地域包括ケア病棟の実績要件等の見直し)、また400床以上の病院は、地域包括ケア病床の届出も不可能となり(下記参照)急性期病院は実質地域包括ケア病床を持つことが難しく、今後機能分化が進む中、地域でどのような役割を担っていくのか、長期的な目線をもつ必要性がさらに増す改定となりそうです。

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2.医師の働き方改革

2019年度は「医師の働き方改革」の文脈で、厚労省内でも多く議論されていたと思いますが、もちろん答申内容にもその流れが表れています。定量的な要件も増えるので良い着地点に向い続けることを期待します。

まず、今回働き方改革の文脈は以下の3つで評価される方針となりそうです。

  1. 増収
  2. 要件緩和
  3. 無駄をなくす・合理化:記録、施設基準届け出系を簡素化&記録削除

1. 増収 について

今回の改定でもインパクトの大きい新設項目の「地域医療体制確保加算(① 地域の救急医療体制における重要な機能を担う 医療機関に対する評価の新設)です。
内容としては「一定の施設基準を満たす病院が救急医療体制を継続できるように新たに算定できる項目をつくります」という内容となりました。
ただし、救急車・ドクターヘリの搬送件数が2,000台を超える必要があり、過疎地域などそもそも搬送件数が少ないエリアに関しては渋い内容ともなってしまいます。過疎地域的には応需率を軸にしてもらったほうがありがたかったのではないでしょうか。

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2. 要件緩和について

麻酔科や緩和ケア科などで非常勤医師の組み合わせによって、診療加算や管理料等を算定できるような内容になりそうです(① 医師等の従事者の常勤配置及び 専従要件に関する要件の緩和等)。

つまり、これまでは「常勤医」がいることが要件の1つでしたが、今後は週3日勤務の「非常勤医師」2名の組み合わせでも要件を満たすことができるようになり病院にとっては算定要件緩和へ繋がりそうです。医師にとってはクリニックと病院との兼業、のような働き方も現実的となりそうです。

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(答申 個別改定項目について p.17)

3. 無駄をなくす・合理化

記録や施設基準届等の簡素化、テレビ会議でも会議出席扱いになる(② 情報通信機器を用いたカンファレンス等の推進)という方針になりそうです。

too muchな資料の作成に時間をかけなくてよくなり、例えば同一グループの複数病院を移動して診察をしている医師などにとっては、移動をせずにITの力を借りれるなど、生産性の高い働き方に繋がりそうです。

番外編

個人的に気になる部分として、医師の働き方改革に併せ、医師から看護師へのタスクシフティングも進むような改定内容がありそうです。

麻酔の一部業務を看護師がやった場合でも麻酔管理料Ⅱの算定を許容する内容も新設されそうです(② 麻酔科領域における医師の働き方改革の推進)

また、夜間看護体制加算の要件として「夜勤明けは休みにするように」という項目も新設され(⑤ 夜間看護体制の見直し)、夜勤明けの日の夜にもう一度夜勤で働く、という働き方は難しくなりそうです。今後看護師も働き方改革が言われるのでしょうか。次回改定も含め、今後の動きに注目したいと思います。

 

3.その他

急性期以外の病床に関して

前回改定時からの流れですが、データの提出を促す流れは引き続き継続しています。
慢性期領域の医療機関はさらにコスト算定や要件整理(p.107 ② データ提出加算の見直し)が必要になり、医事課人材の確保が必要になりそうですね。余談ですが医事課のスキルは各病院の収益に直結するので医事課スペシャリストはもっと評価されるといいなあと思っています。

オンライン診療

大きな変更点としては
オンライン診療料の実施要件について、事前対面診療の間隔が6ヶ月から3ヶ月以内の患者が対象と条件緩和されたこと(① 情報通信機器を用いた診療に係る要件の見直し)、「遠隔連携診療料」の新設となりそうです(③ かかりつけ医と連携した遠隔医療の評価)。

浸透ペースが緩やか(https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/699264/
)なのが個人的にはもどかしいですが、患者にとって利用しやすい医療サービス展開のために、この領域でサービス提供をしている企業のみなさんには、診療報酬上の享受のスピードに関わらず、頑張ってもらいたいです。。。

ACPの流れを後押しする流れ

ACP(アドバンス・ケア・プランニング、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/b
unya/kenkou_iryou/iryou/saisyu_iryou/index.html)など、意思決定支援に関する指針を定めておくことが、地域包括ケア病床入院料の施設基準に追加されました。

点数的にはインパクトはそこまでないかもしれませんが、ACPの必要性は医療従事者なら誰でも思うところだと思うので、このように現場と国がつながるような内容は素晴らしいなと感銘を受けました。

 

まとめ

2020年の診療報酬改定に向けて、中医協から答申内容を、以下の3つに分けて解説しました。

  1. 急性期病院のあり方
  2. 医師の働き方改革
  3. その他(データの提出やオンライン診療、ACP)

今回は働き方改革や病床見直しなど、国にとっても緊急度の高いアジェンダの多い改定になった分、その他製薬企業等にとっては渋い改定内容となった印象でした。

重要な点のみをさらった内容となりましたがいかがでしたでしょうか。告示が楽しみですね。

より突っ込んだ改定背景や、その改定が目指すもの、など個別にご対応可能ですのでご興味のある方はいつでもご連絡ください!

--筆者--
中村 実穂
1992年生まれ。国立大学卒業後、聖隷浜松病院ICUにて看護師として勤務。その後、病院経営分野へ進むべく、エムスリーキャリア(株)経営支援事業部へ転職。全国200以上の病院に訪問しながら、複数の病院の採用コンサルティングに従事し全国の採用難の医療機関で複数成功事例をつくる。また並行しDPC領域の新規事業立ち上げにPMとして従事。2018年10月アイリス(株)に入社。臨床研究・治験領域のPMを担いながら、医療現場とのコミュニケーションが必要とされる部門に横断的に関わる。

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