病院経営ウェブマガジン“Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)”

Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)。病院経営ウェブマガジン。病院経営の中でも急性期病院の経営・運営に携わる人のためのメディアです。

Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

総合病院職員がベンチャー企業へ転職する理由

私は急性期病院 済生会横浜市南部病院で広報担当として働く事務職員です。2019年5月にこのヘルスケアコンパスに「生き残りをかけた患者獲得戦略」を投稿しました。私が患者獲得のためどんな戦略を立て、行動してきたかはこちらの記事をご覧ください。

記事投稿から4ヶ月、私を取り巻く環境は大きく変化しました。

SNSでの病院経営課題の発信や患者獲得戦略の記事を書いたことが、私の可能性を大きく広げてくれました。その結果として、地域連携支援サービス「foro CRM」を提供するベンチャー企業「メダップ株式会社(以下メダップ)」への転職を決意しました。それは、私のキャリアと将来の日本全体の医療へ提供できる価値を増やすためです。

今回の記事では、

  • 病院職員として取り組んできたこと、学んだこと
  • 病院職員だから生まれた葛藤
  • ベンチャー企業メダップへ転職する理由

を書き記します。

 

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現職で取り組んできたこと、学んだこと

現在(2019年10月時点)は広報担当として働いていますが、事務系総合職として採用されたため、広報だけでなく病院経営全体に多角的にアプローチしてきました。簡単ではありますが、3年半の間に携わった業務についてお話しします。

1年目 診療材料や医療機器を扱う管財部門

①医師が使用する医療材料統一に向けた内部交渉
②医療材料の価格ベンチマークシステムに基づいた対外部の購買交渉

この2点を学びつつ、病院の基本的な意思決定プロセスである委員会運営に関与しました。1年目に、病院経営の難しさと、BIツールを活用して病院のデータを分析する楽しさを教え、業務改善を自由にさせてくれた上長との出会いが今の私の在り方の基盤になっています。

2年目 企画部門への異動 病院の課題解決

新卒2年目で企画部門へ異動となりました。こんな異動は自院でも珍しいようです。今でも真意は不明ですが、新人で空気を読まず業務改善を提案して定時帰宅していたことが評価されたと勝手に推察しています。

ここでは、2つのプロジェクトを中心に病院の課題解決に従事しました。
①入退院支援センターの立ち上げ
②予約時間の適正化による手術室稼働率向上

ほかにも、診療科ヒアリングに基づく病院全体への課題フィードバックおよび進捗確認、管理職が経営課題を議論する研修の運営、運営方針と行動計画書の管理など、全体を俯瞰する業務に携われたことで病院経営に対する視野が広がりました。

3年目 最優先課題「予定入院患者獲得」への気づき

企画部門で病院全体を俯瞰して1年が経ち、DPCデータ、医事データ分析、業界の情勢、周辺環境分析を行う中で、我々が取り組むべき最優先課題は「人口減少に対応する予定入院患者獲得施策」と結論づけました。そこで、

①予定入院患者獲得戦略
②予定入院増加に伴う病院機能拡充

この2つを同時並行で進めることが、自院の生存戦略であると考えた上で、

①手術室増室提案
②広報戦略立案と実行

この2本柱を掲げました。

手術室を増やす明確な根拠を作るために

外科系診療科の主任部長に一人でヒアリングを行いました。ブラックボックスだった診療科ごとの手術待ち状況を可視化し、増室後も手術室稼働を維持できることを示しました。また、疾患ごとの原価計算を行うことで、収益だけでなく支出も加味した根拠を示すことができました。こうして現場の声とデータを組み合わせることで企画の妥当性を固めたことで、隙がない企画になり、2019年度のプロジェクトになりました。病院広報人を名乗る身ですが、これは私にとって最も達成感ある仕事でした。

地元企業との積極的タイアップ

「医療サービスに限らない多様な接触が、地域と病院を繋ぐ」というビジョンのもと、地元企業や施設との積極的なタイアップ企画を複数打ち出しました。

髙島屋とコラボした管理栄養士監修弁当の実現 

 地元施設、行政とタイアップした健康教室の提案および実現

 近隣高等学校での「病院で働く職種を知るお仕事塾」の開催

こうした企画で地域と病院の接点を増やし、自院のイメージ向上と敷居下げを狙いました。
ブランディング活動の一環で、広報誌のライティングと編集も全て担いました。一般の方に伝わる文章を徹底しつつ、マーケティング戦略を一新したことで、年間6000部消費だった広報誌を3ヶ月で7000部の消費へと拡大させました。

(22号以降、ライティングおよび編集を担当)

ホームページリニューアル予算計上

患者獲得にはネットでの情報発信が必須であると院内で発信し、スマホ対応、全ページCMSの新ホームページを作ることを次年度予算へ計上しました。

4年目 予定患者獲得の徹底

地域連携部門へ異動となり、広報と地域連携業務を兼任しました。
異動に伴い、手術室増室はスタート段階で業務から外れています。2019年8月にホームページリニューアルを完了させ、現在は周辺の開業医との地域連携戦略の立案および、部門内の業務改善に取り組んでいます。リリースしたホームページは、日本で一番見やすい病院ホームページだと自負しています。GoogleAnalytics、search consoleの分析でも多くの成果が見えていますが、長くなるので語るのはまた別の機会に。是非ご覧ください。

 

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仕事から生まれた葛藤

繰り返しになりますが、病院の患者獲得に向けた戦略において、
①地域と連携する営業(短期的な効果大)
②広報によるブランディング(中長期的に必須)

この2つが最重要課題であることは、地域連携部門の現場を見ても明らかでした。一方で、これらに取り組むべきだと分かっていながらも、自身の仕事に対する葛藤が膨らんでいきました。

葛藤1 チームではなく個人プレーの日々

3年目以降の私の働き方は、自院の事務職の中では特殊でした。データを分析して企画を独自に作って動くことは、一般企業では当たり前のことでしょう。しかし、五月雨に降ってくる業務に都度対応せざるを得ない従来の病院事務職の業務とは乖離があり、組織内で良くも悪くも浮いていました。企画部門から地域連携部門へ異動すると、個人プレー感は更に強まりました。

チームで動くための業務改善提案や仕事への考え方を発信しても、院内での実施には至れませんでした。(退職が決まり、引継ぎが始まってから、徐々に始めることが出来ています。)私は25歳の若造。自分の業務の範疇を超えているものは提案止まりとなっていました。そんな日々の中で、チームで動く能力を磨ける環境で働きたいという想いが強まっていきました。

葛藤2 医療制度と一病院の集患活動の乖離

先日、厚生労働省が424病院に病床再編検討を促すニュースが大きく取り上げられました。

日本の医療制度が抱える課題の深刻化と、病床再編に対する急性期病院の現状維持の傾向は顕著ですが、再編を断固実行するという厚生労働省の覚悟を感じました。同時に、私がこの医療制度の維持に貢献できる人間になりたいなら、一病院職員として自院に患者を集めることに躍起になる他に、やるべきことがあるのではないかと悩むことが増えました。

日本の医療制度の理想は、すべての国民へ適切な医療が届くことです。一病院が過度な集患を行うことは是とされていません。そのために医療広告規制が存在します。今までの自身の取り組みは間違いだとは思っていませんが、一病院への集患と収益のみに集中せず、日本全体を見る視野を育てなくてならないと感じました。

 

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メダップに転職する理由

こんな葛藤を抱えながら、仕事とは別に、インターネットで病院・医療が抱える課題に対する発信を「病院広報人 (@hospital_prman) | Twitter」として行ってきました。そして、この発信によって出来た繋がりが、ヘルスケアコンパスへの寄稿とメダップからの声掛けでした。私がインターネットで行動した結果築くことができた大切な繋がりです。ここからは、なぜ私が転職を決意し、メダップを選択したかをお話しします。

1. ミッション・ビジョンへの賛同

メダップのミッションは

「医療におけるSDGsの達成に貢献する」

そして、ビジョンは2つ

  • すべての患者さんに適切な医療が届く世界を実現する
  • 医療従事者の生産性を高め、ポテンシャルを最大限発揮できる世界を実現する

私が感じていた病院経営の課題と密接に関わる企業であることが一目でわかりました。

2. 医療にビジネスの視点を取り入れる

内部から病院を変えようとすると、どうしても最終的に国の制度改革に視点が偏っていきます。

  • 法律を変えれば
  • 制度が良くなれば

こう考えてしまうのです。もちろん、転職を決めた今でも、制度改革の必要性は強く感じています。医療の在り方の根本を変えることは非常に合理的です。ただ、25歳の若造が突如官僚のトップになったり、政治家にはなれません。大きな社会貢献には長い道のりが必要です。道のりの中で、自分が持ち合わせていなかったビジネスの視点を取り入れるという発想をメダップが教えてくれました。

3. 病院業界を広く見渡す

私は新卒2年目で企画担当になり病院全体を俯瞰できた経験を今でも大切に思います。そして、自院が日本の医療制度を維持する急性期病院のひとつであることにも気づきました。メダップで多くの病院経営の現状を知ることは、医療制度維持への貢献に向けた大きな資産になることでしょう。

4. 病院が抱える最重要課題「地域連携」

病院が抱える最重要課題は広報と地域連携と先述しました。
メダップは、地域連携強化サービス「foro CRM」を提供しています。

https://foro-crm.jp/2019/07/04/release/

一般企業が用いるようなCRM(顧客との関係を管理するマネジメント手法)を、病院がクリニックとの地域連携に活用するには、PDCAを回せる事務人材の育成が必須です。私の想いが叶えられる要素がここにもありました。カスタマーサクセスという考え方に基づき、病院と二人三脚で地域連携に取り組むこと、そして病院の紹介数が増えるという成功に導くことは、病院とクリニックの間に存在する敷居を取り除き、地域包括ケアの推進につながります。

5. スタートアップだから行く

①企業の成長を一緒に作り上げたい

メダップは、まだ社員数が少ないスタートアップ企業です。スタートアップ企業は明日潰れるかもしれない不安定な会社だと思う方も多いでしょう。しかし、メダップの定めたミッションの方向性の正しさと、提供するサービスへのニーズの大きさは、私が急性期病院の経営課題に直面していた人間だからこそ分かります。これから間違いなく病院業界で求められる企業だとヒシヒシと感じるのです。その成長を共に作り上げることは何ごとにも変え難く、病院でも大企業でも経験できません。

②自分より圧倒的に優秀な人と働ける

現職では個人プレーをしている自覚がありました。そして、組織内部での個人プレーには継続性はありません。将来、チームで働ける環境を自ら作り上げられるようになるためには、チームとして働く場所で学びたいと考えていました。メダップで働く方々は、私より圧倒的に優秀な人ばかりです。人数が小さい会社であれば、その方々と必ずチームで仕事ができます。企業と病院への貢献だけでなく、自身の成長にも繋がる環境で働けることも、決め手の1つです。

 

まとめ 私の想いを実現できる環境があった

今まで記したように、メダップには、現職で感じた病院の課題解決、医療制度改革への関与、自身のキャリアアップなど、私の想いを受け入れてもらい、実現できる環境がありました。また、私が自ら取り組んできた活動による繋がりからチャンスを貰えたことがなによりも嬉しく、光栄でした。メダップと歩むことが、私にとって最高の選択だと確信しています。

安定と平穏のために変化する

「年功序列の終身雇用形態の時代は終わりました。老後用に自力で2000万貯めてください」

メディアでこんなニュースが取り上げられています。自己責任社会の到来だと揶揄する人もいます。現状に対して、漠然とした不安を感じる方も多いはずです。キャリアに悩む方も増えるでしょう。私もその一人です。

就活で病院事務を選択したのは「潰れない企業で、安定した給料で、平穏な日々を過ごしたい」からでした。この理想は、これからも変わることはないでしょう。しかし、病院に勤めた3年半で、私と私の家族の人生を守っていくためにも、組織に依存するのではなく、変化する社会に対応できる人間であり続けることが、平穏な生活に繋がると考えるようになりました。

「安定と平穏のために変化する」

矛盾した言葉かもしれませんが、この考え方を私のポリシーとして持ち続けていたいです。ここまで私を育ててくれた済生会横浜市南部病院を愛する気持ちは、誰よりも強い自信があります。私の生涯のパートナーと出会えたのも、この病院に入ったからでした。この愛を絶やすことなく、次のステップへ進みます。メダップが提供するサービスを通じて多くの病院を成功に導き、この素晴らしい日本の医療制度の存続に貢献する道のりを歩み続けます。この記事を最後まで読み関心を持ってくださった方は、私のこれから続く長い道のりを見守っていただけたら幸いです。また、メダップのビジョンと私の想いに共感した方、一緒に働いてみませんか。


-筆者--
堀江惇
2016年明治大学商学部で卒業後、済生会横浜市南部病院に入職。管財課、経営企画課、地域医療連携室で、病院広報、地域連携を始めとする病院の経営課題解決に従事。2019年12月よりメダップ株式会社で勤務予定。