病院経営ウェブマガジン“Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)”

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Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

医療機関が災害対策を見直す際に使ってほしいツール

台風19号は、甚大な被害をもたらしました。

関東直撃という稀なルートからの台風によって、東日本でも台風への意識が変わったかと思います。
2019年の台風15号、19号の被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。
また、昨年の西日本を襲った土砂災害の復旧にあたっている方々にも頭が下がります。

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さて、災害はある程度起こってしまうことを前提に対策を練らなければなりません。医療機関では、災害拠点病院に指定されているところもあり、BCP(Business Continuity Plan, 事業継続計画)が策定されます。

私は、たまたま新卒の際にBCPの策定の「裏付け」について話す機会がありました。
医療機関を審査する事務局をおこなっていたおかげで、災害訓練について当該部署とディスカッションしていました。

審査の仕事はこちら↓

医療機関の災害対策については、以下のブログが参考になります↓

今回は、そんな新卒の際に得た「災害対策を準備する上での知見」を共有します。

 

災害対策アセスメントツール:Hazards Vulnerabiltiy Analysis

災害対策を準備していくのに、何から準備していけば良いのか?と思われる方もいるかと思います。
前任者が準備していたり、前年度行われていたりしたものを、そのまま継続という機関も多いでしょう。

近年起こった災害を参考にすることもあります。2011年のあとは、兎にも角にも地震対策でした。2019年からはおそらく台風対策も強化することになり、避難訓練も台風を想定したものも出てくるでしょう。

私たちは過去の実績に基づいて、可能な限り同様の被害を小さくすることはできます。しかし、災害対策を直感的におこなっていくことはおすすめしません。
直近で起こった事象について考慮しつつ、災害全体を網羅的に洗い出して、リスク順に対策する必要があります。

そんなときに便利なのは、保険会社がリスクアセスメントとして導入しているツールです。
今回は、カイザーのリスクアセスメントツールを紹介します。

ざっと中身を見ていきましょう。

Hazards Vulnerabiltiy Analysis

ツールは、エクセルで作られています。マクロが組まれているので、起動させるときに、マクロを有効にするのを忘れずに。

エクセルファイルは4つのシートに分かれています。

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Inputは、病院名を入力。
Dataは、計画を立てる年(もしくは前年)の災害の数を記録。
Hazardsは、入力したDataが一部反映された状態で、確率や想定被害度を入力していくと、リスクが自動計算されます。
Summaryは、Hazardsで入力した情報をもとに、TOP10の危険脆弱項目や警告があった項目を自動でまとめてくれます。

Dataで入力する項目

警告のカテゴリは、5つあります。

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そして、警告の種類は、62種類も。

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かなり数が多いように見えますが、分析したい年の災害を入れていくので、当てはまらないものも多いと思います。

Hazardsの記入例

実際に、Dataシートをいれると、以下のHazardsシートの灰色の部分に反映されます。

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確率や想定被害度を入れていくと、黄色のリスクが%で自動計算されます。

Summary

Hazardsで入力したものから、自動でSummaryが生成されます。

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結果的に、直感的に考えていたリスクを一緒になる可能性もありますが、見えてなかったリスクもあります。

毎年きちんと見直して、どういうリスクに対して災害対策の力を入れるべきか、網羅的に見返すことができます。

 

最後に

2019年台風19号の被害を受けて、災害対策の見直しをおこなう医療機関もあるでしょう。

すぐに「台風対策をしよう!!」と言う前に、2〜3日かけて、医療機関のリスクを網羅的に見返してみませんか?

もしかすると、自然災害以外にも、テクノロジー災害などのリスクも見つかるかもしれません。

改めて、被害にあわれたみなさんにはお見舞い申し上げます。また、復旧に追われている医療機関や自治体の方、地域のためにありがとうございます。

幸いにも被害を免れた医療機関のみなさん、ぜひこれを機会に災害のリスクを分析してみてください。

 

参照

 

--筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に関わる。並行して一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。2019年より亀田総合病院経営企画部に転職し、病院のデジタルトランスフォーメーションに従事。