病院経営ウェブマガジン“Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)”

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Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

チーム医療は自分との戦い

医療機関はとにかく忙しい。

患者さんはひっきりになしにやってきます。基本は体調が悪くなってから来る場所なので、自然とイライラも溜まりやすい。そのイライラを、医療機関の職員は"仕事”として受け流しています。

患者さんに接しないバックオフィスも、シッチャカメッチャカ。鳴り止まない内線電話にPHS、病棟や外来からの呼び出し、とどめに予想外の退職者や休職者への対応。

でも、患者さんに「良い」医療を届けたい一心で、私たちは医療機関で働くことを選んびました(少なくとも私はそうです)。

 

そんな忙しさの中で、「良い」医療を提供していくには、チーム医療は欠かせません。現代の医療において、ひとりでできることは限られています。

チーム医療にはいろんな形があります。診療科単位のチーム、オペ室などのその日のミッションを乗り越えるチーム、経営的に安定しているかを測るためのチーム、診療報酬改定を乗り切るチーム、外部審査に対応するチーム、医療安全や感染管理を粘り強く推進するチーム。挙げるときりがないほど、医療機関の中には多くのチームが存在します。

 

冒頭の言葉に戻ります。「医療機関はとにかく忙しい。」

医療機関は、顧客の需要をコントロールしにくい業態です。つまり、患者さんがいつどんなタイミングでどんな病気で来るかを医療機関の都合によって調整するのは難しい。能動的に業務を進められず、発生ベースの業務に振り回されてしまう状態が続くと、精神面に非常な負荷を与えます。チームのパフォーマンスが落ちたとき、心理的な不安定さから他人の責任を押し付けたり、感情的な言葉を吐く人も少なくありません。

 

最近IT業界から医療分野に戻ってきた身として、他責だったり、感情的になったりする人がこの業界には多いのではと気が付きました。そこで、どうすればより良いチームを形成できるのか、改めて調べてみました。

今回は、チームを立て直すにあたって見つけたハーバード・ビジネス・レビューの記事を紹介します。

その記事とはまさに「チームを立て直したいなら、まず自分を見つめ直せ」(参照:https://www.dhbr.net/articles/-/5745)です。 

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前提

チームとは、

異なる志向やスキル、経験、物の見方、習慣を持つ個人により形成される、複雑なシステムである。

つまり、一緒の組織や一緒の目的のために集まったとしても、そもそも異なる人の集団であり、その関係性は単純ではないことを念頭に入れなければならないようです。

必要なこと

複雑なシステムに、有意義かつ持続的な改善をもたらす可能性を高めるためには、リーダーを含めたメンバー全員が、次の3つの基礎的な能力を身につける必要がある。内面的自己認識、外面的自己認識、そして、自分の責任を取ることである。

「内面的自己認識、外面的自己認識、そして、自分の責任を取ること」。チームについて書かれた記事ですが、「自己」と「自分」という一人称に帰結していることにかなり驚きました。

3つの能力を掘り下げていきましょう。

内面的自己認識

内面的自己認識とは、

自分の気持ち、信念、価値観といった、いわば自分に内在する物語を理解することを意味する。

自身の物事のとらえ方、認知の仕方にどんな癖があるかを理解していない場合、問題の所在を間違えたり、根本的な間違いを犯しやすくなるようです。

なので、感情的に強い反応をしてしまいそうになったとき、以下の質問を自問自答してみると良いそうです。

・自分がいま感じている感情はどういうものか。
・現在、他者や現状に対して自分が抱いている思い込みはどういうものか。
・自分の解釈は事実に沿ったものか。
・自分にとっての中核的な価値は何か。そして、それが自分の反応にどのように影響しているか。

実際、私も社会人経験の中で、感情的な対応をしてしまったことが何度かあります。とても反省しています。ただ、当時の自分は対応の方法を知りませんでした。

改めて、今抱いている感情を言語化し、どんな価値観がもとになってそういう反応をしてしまっているのか、一呼吸おいて考えられるようになりたいと思います。

外面的自己認識

 外面的自己認識とは、

みずからの言動が与える他者への影響を理解することを意味する。

自分の仕事中の振る舞いが同僚にどういう影響を与えているか、ポジティブな部分もネガティブな部分も知る必要があります。

外面的自己認識をするためには、直接フィードバックをもらうのも大切なようです。

・ミーティング中の自分の言動で、何か役立つことはあるか。
・また、その逆の言動はないか。
・自分のチームとの接し方の中で変えるべき点があるとしたら、それは何か。

同僚に訊くタイミングは見たほうがよさそうですが、気の置けない同僚と定期的に振り返る機会を設けることがもっともよさそうです。

私も月に一回、上司やプロジェクトのメンバーと、「今の自分に足りていないところは何か?」を確認するようにしています。ずばりと答えてくれる人は少ないですが、それでも周辺情報を少し話してくれるので、自分が周りからどう見えているかを知る良い機会になっています。

自分の責任を取ること

なにか問題が起こった時、自身も関与はしているが主担当ではない場合でも、一緒になってその問題を解決できる人は、残念ながらかなり限られていると思います。

問題に対して

  • 誰々がミスをした(犯人探し)
  • あそこに問題があった、という説明(言い訳)
  • 自分は主担当じゃなかった(逃避)

などの光景もよく目にするのではないでしょうか?

 ただ、チームが効果的に働くには、各メンバーが自分の責任を取る必要があります。

そのステップが紹介されています。

1. 問題があることを認識する。これが、実は一番難しい。私たちはとかく問題から目を背け、代わりに自分の忙しさを語りたがるからだ。その衝動を抑えよう。
2. 自分が問題の一端であることを受け入れる。あなたも問題を引き起こしている一因なのだ。
3. 問題解決に責任を持って取り組む。
4. 問題が完全に解決するまで引き下がらない。 

このステップを読んで、「チームとしてうまくいっていない」という問題に取り掛かるのは、後回しになりがちだなぁとキャリアを振り返ってもそう思います。そして、それに自分も加担していると認識するのはとてもつらい。

ただ、経験として、良いチームで働くことがどういうことかも知っている。理想と現実のギャップに対して、チーム全員で取り組めたら、それ以上のことはない。そしてそれ以外の選択肢はないのだということを、このハーバードビジネスレビューの記事から認識できました。

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最後に

医療機関はとにかく忙しい。

患者さんは目の前にいるし、その数をコントロールすることも難しい。

苛立ちがお互いに伝染して、些細なことで感情のもつれが発生します。

だけど、私たちは患者さんに「良い」医療を届けたい一心で働いているはずです。そして、現代において、良い医療を届けるのにチーム医療は欠かせません。

もし、今のチームに何らかの問題があるのであれば、「内面的自己認識、外面的自己認識、そして、自分の責任を取ること」の3つの能力を強化し、チーム全員で取り組めるよう意識を変えていくのが、唯一無二の対策なのかもしれません。

 

参照

--筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に関わる。並行して一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。2019年より亀田総合病院経営企画部に転職し、病院のデジタルトランスフォーメーションに従事。

edited by Junko Yabuki