人が失敗すると、ここぞとばかりに「あいつは、やると思った。」「昔から怪しいと思ってた。」という人いますよね。
その一例が、伊藤穰一氏がMIT media labの所長を辞任する話。
私は長年の伊藤穰一フォロワーなので、そのへんは差し引いて読んでください。
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話をご存じない方のために、以下の記事から抜粋すると、
未成年女子人身売買容疑で逮捕され獄中で怪死を遂げた富豪ジェフリー・エプスタイン(66)。
この渦中の人物から大量の金を受け取っていたことでMITメディアラボ所長の伊藤穣一氏に辞任を求める声が高まり、ついに辞意を発表しました。
・エプスタインはMIT公式の投資家データベースでは「非適格」。ブラックリスト指定だったのにメディアラボはそれを無視して金を受け取った。
・ほかにも750万ドル(約8億円)受け取っていたが、ビル・ゲイツ名義などで隠蔽していた。
・まずい人物という認識は部内では浸透しており、伊藤氏のラボでは一部職員がエプスタインを「ヴォルデモート」、「名前を呼んではいけないあの人」と呼んでいた。
寄付金を、未成年女子人身売買容疑で逮捕された人からもらっていて、それを匿名にして処理していたことが問題になっているようです。
ちなみに、伊藤穰一氏というのは、インターネット界隈では非常に著名な方で、
- 日本で初めてホームページを作った人
- デジタルガレージやInfoseek Japanを創業
- Twitterの初期の投資家
- ブログを日本で広めた人
など、インターネット界で多くの業績を残しています。
Twitterでは、こんな反応も。
伊藤穰一が島桂次と偶然コネが出来て元部下の畑恵から船田元と懇意になり、自民党の部会に食い込んで若き政商として活躍した頃から遠目に見ているので、今回の件も、実に彼らしいと思うのみ。
— Hironobu SUZUKI (@HironobuSUZUKI) September 9, 2019
これに続く元MITメディアラボ学部員の内情、伊藤穰一氏についてメディアラボにいた時代に目にした実態が興味深い。多様性を謳いながらヒスパニックは除外、シニアメンバーを排除し自分のお友達を採用、自分のサークル以外の研究への助成を却下し派手なイベントを企画…時間があったら後で一部訳す。 https://t.co/lB3EXi2KKM
— ベッド紳士🏴🇬🇧 (@Bed_gentleman) September 8, 2019
世の中の、伊藤穰一バッシングに対して、長年友人関係のある、ハーバード大学の教授Lawrence Lessig は、ブログでこんなことを。要約しながら書いていくと、
Lessig教授は、エプスタインからの寄付の話を初めから知っていて、Noを言えばよかったと釈明しているものの、Noと言えなかった経緯について考察しています。
世の中の大学が得る寄付の種類には、4つの種類があります。
- 裕福な個人からの寄付。そのお金は善い行いで得たもの:例 テイラー・スウィフトが歌を歌って稼ぐ。
- GoogleやFacebookのような企業からの寄付。
- 犯罪者からの寄付。だけど、お金の源泉と犯罪は関係ない。
- 企業や個人からの寄付。そのお金は、間違った方法や有害な方法で得られたもの。
大学には、それぞれの寄付を受け取る基準があるものの、必ず4つの種類の寄付を得ている、とLessig教授は言っています。
4のお金は受け取らないに越したことはないものの、3のお金も含めて匿名で受け取ることもあるでしょう。さらに3の寄付に関しては、匿名で寄付をしたからといって、その人の「間違い」が許されることがないようにしないといけません。今回のケースも3の寄付にあたり、エプスタインの犯罪が確定したあと、伊藤穰一はエプスタインの寄付を受け取る決断をして匿名処理をしていると、Lessig教授は言っています。
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ここまで読んで、改めて、私が長年の伊藤穰一フォロワーであることを鑑みつつも、感じたことは以下のことです。
自分のことを棚に上げないほうがいい。
たとえば、
- 今日飲んだコーヒーは、完全にethicalと言えるか?(生産者に不当な労働をしていないか)
- 今着ている服は、アジアの諸外国で、正規のルートで作られたものか?
- 人生で今まで、「エロ」コンテンツを享受していないか?
- 祭りや縁日の屋台で、自分が買ったお店は、完全にクリーンなお店か?
程度の差こそあれ、資本主義社会に住んでいる以上、自分が社会の歪んだ部分に加担している可能性は大いにあります。
仕事に当てはめてもそうです。同僚のミス、上司の判断ミス、組織的失態、それらをここぞとばかりに非難する人がいます。ときに、非難されて当然のこともあるかもしれませんが、それでも、明日は我が身。失敗しない人なんていません。生涯、清廉潔白な人もなかなかいません。
事実に対して、各個人はそれぞれの真実を持っていると言われることもあります。渦中にいないとわからないことも存在し、それを周りがとやかく言う必要もありません。
良くないことは良くないこととして受け入れつつも、自分は自分の人生を歩み、他人の良い部分は素直に見習い、失敗したときは励まし合う。
自分のことを棚に上げず、謙虚さを忘れず仕事も人生も進められたらと今回のニュースに触れて感じました。
---筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に関わる。並行して一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。2019年よりグループ病院経営企画部に転職し、病院のデジタルトランスフォーメーションに従事。