病院経営ウェブマガジン“Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)”

Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)。病院経営ウェブマガジン。病院経営の中でも急性期病院の経営・運営に携わる人のためのメディアです。

Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

病院ホームページ 良いパートナーの見つけ方

病院のホームページの制作会社このような不満を抱いたり、意見を耳にしたりすることはありませんか?
「言ったとおりにはなるが提案がない」
「何だかんだ理由をつけて“できない”といわれる」
「医療と一般的なビジネスの違いをいつまでたっても理解してくれない」
「すぐにお金の話になる」
「更新に時間がかかる」
「こちらは素人でそっちはプロ」
「とにかく融通が利かない」

そういわれても仕方がない制作会社やトラブルがあることも知っています。実際に私自身も制作側の立場ですが、クライアントである病院へご迷惑をおかけしたこともあります。

ただ制作会社から見ると、「無理な相談」「いまさらな要望」「最初の話と違う」といわざるを得ない状況もよくあります。解決したくても受託制作という立場の弱さから、新たな火種を増やしたくないので口をつぐんでいます。

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病院ホームページ 良いパートナーの見つけ方

病院がホームページの制作依頼をする際に、起こりがちな課題解決の消化不良やフラストレーション。それらを回避できる良い「ホームページのパートナー」を見つけるために、知っておくべき業界事情とパートナーの探し方を、現職ウェブサイト制作ディレクターである私からお伝えします。

ウェブ制作会社の選定に関して発注側を対象にしたこんなアンケートがあります。

【Q】あなたは発注したWeb制作会社に不満を感じたことはありますか。
ビジネスへの理解が不足していた60名(46.2%)
(参照:https://www.metaphase.co.jp/news/180215/

なぜ、使えない病院ホームページ、物足りない病院ホームページができてしまうのか

私の結論は
「病院側がホームページで何をしたいのか不明確、制作会社が病院のビジネスについて理解が不十分」
です。

協業が必要なプロジェクトなのでどちらかが一方的に悪いというより、噛み合わないケースが多いのではと思います。噛み合わせるためには、やりたいことを明確に、やれることを丁寧に説明するということに尽きますが、お互いに見えているものが違うのではかみ合いません。こうなってしまうと最終成果物であるホームページの完成度が低くなるという結果を生みます。

さらに言えるのは、すでに信頼関係を築いているウェブ制作会社や信頼できる人からの紹介でも、プロジェクトが上手くいかない場合があることです。
その原因として、「プロジェクトに合ったウェブ制作会社選び」ができていないということが考えられます。

ウェブ制作会社には、デザインが得意、マーケティングや戦略立案が得意などの個性があるのも事実。ミスマッチのオーダーではプロジェクトの品質を下げてしまうこともあります。

そうならないためにも、「プロジェクトに合ったウェブ制作会社選び、制作会社をコントロールする方法」が肝心です。この記事では、こじれる原因を明らかにし、失敗したと言われない進め方をお伝えしたいと思います。

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制作会社側でよくあがる声

「クライアント(病院側のホームページ担当)のリテラシーが低くてプロジェクトが混乱する」

冒頭の病院の声とは反対に、制作会社からはこのような声もよくあがります。

病院担当者・関係者のITやネットリテラシー(技術への理解や使いこなす能力)の低さがプロジェクトに混乱を及ぼすことは多々あります。私の経験上、売上2兆円の食品メーカー、3兆円の電気機器メーカーのネット担当者であっても、リテラシーは高くないことがほとんどです。ウェブや広報の担当だからといって充分なリテラシーを備えているわけではないというのが、企業や組織の現状でもあります。

リテラシーが低いことで何が問題になるかというと、

  • 広報的な効果が低いものになってしまう
  • 予算以上の成果物を期待してしまう
  • 制作会社のいいなりになって、主体性と院内での責任の所在が失われる

などです。

これらの問題を放置しますと、プロジェクト終盤や公開後にトラブルに発展します。

最終的には、制作会社はこのトラブル対応や軌道修正に労力を費やしてしまい、実際の成果物に割ける時間が相対的に減り、クオリティが下がってしまいます。そして病院側の視点でみれば、支払っている制作費(制作会社の人件費)が、デザイン制作やページの丁寧な作成ではなく、トラブルシューティングという名のリテラシー向上のお勉強代に消えていきます。

 

期待を上回らないホームページ

「あの業者は言ったとおりのことしかしてくれず提案がない」

制作会社を評価する言葉として、いろんな業界から同じ主旨のご意見をよくうかがいます。極論では、制作会社は受託という業態ですので依頼されたものをかたちにするのが仕事で、依頼されたもの以上の成果物や、依頼内容から大きく離れた制作物を納めようとはしません。とはいえ、発注側である病院にとっては「プロフェッショナルにお願いする」という感覚も持っているでしょうし、制作側にもよいものを作ろうという矜持もあります。それが提案書というかたちでなくてもデザイン案や実際のページとして提示されることもあります。それでも、こういった声が上がるのは、制作側から出されるものが病院側の期待値に達していないということでしょう。

実はホームページ制作においても「情報の非対称性」は存在しています。病院側と制作会社の間には持っている情報に大きな溝があり、制作側が把握できている病院ビジネスのしくみは限定的です。加えて前述のリテラシーの問題も影響して病院側も制作会社ができること(できる範囲)について過剰な期待を寄せることもあるようです。溝を埋め、期待に応えてくれる制作会社を探すときには「SEOが得意である」とか、「かっこいいデザインができる」といったスキルを見極めるのではなく、まず病院がビジネスパートナーとしてどのようなスタンスで接するかに重きをおいてほしいと思います。

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ホームページを成功に導くための心得

方針を共有し、目的の明確化にする

ホームページを成功に導くためには、制作会社が病院の仕組みとビジネスを理解することが必須です。なぜなら、ホームページに経営課題のソリューションを求めるケースが非常に多いからです。集患・増患、採用強化、連携機能の拡充、理念や行動方針の周知と達成、地域社会貢献をネットの特性やテクノロジーを使って解決したい、改善したいという思いが「ホームページをよくする」というアクションにつながっています。制作会社はホームページを作るプロであって、病院がなぜそういった改善に取り組もうとしているのかを把握しているわけではありません。「よくする」には、自院の強み・弱み、情報を届けたいターゲット、目的や目標を制作会社と病院で共有し、「制作会社は病院のことをわかっていない」という状況から脱却してください。

この方針共有でつまづくと、問題点が表面化しないまま深い議論のチャンスを失い、平均点すら危ういホームページ制作へ向けて進みだします。これが「制作会社から提案がない」=「病院へ提案したくてもできない」状態です。

一方で病院側から指針ではなく「SEO・MEOをしたい」「アクセス数を増やしたい」といった要望が提示されることがあります。これは、レストランでオーダーするとき「隠し味にレモンを使いたい」「油の温度は低めでじっくりと」などと店員に伝えるようなものです。まずは、和洋中、パスタなのかラーメンなのか蕎麦なのかが先です。自院が何をしてほしいかより、どうありたいか。技術やコツよりもまず食べたいものです。方法よりも方針といってもいいでしょう。「関節リウマチを専門とする医師が入職し、リハ施設もリニューアルしたので整形外科を売り出していきたい。連携室には紙の資料があるがホームページにも載せたい」といった具体的な課題や方針があれば、制作会社も課題解決に向かって「提案」へのアクションをとりはじめるはずです。

 

病院と制作会社の役割分担を確認する

ホームページを発注し制作が始まると、院内各所への原稿依頼や資料提供で担当者が奔走するという流れが多いかと思います。各部門にとっても通常業務の合間を縫って進めることになり、負担は軽くなくホームページ制作でもっとも難航しやすい仕事のひとつです。

それに加えて「病院側でページの構成案を作らないといけないのが大変だった」というお話を複数の病院・クリニックからうかがいました。構成案とは各ページのレイアウトをまとめた設計図のようなものです。制作会社や担当の制作ディレクターが、ノウハウや知恵を生かして作っていくのが通例のはずなのですが、それを病院側に任せているという会社があるようなのです。事前にそのような取り決めになっていたならまだしも、プロジェクト開始後にそのように言われ、作らないことには制作が進まないので、ホームページのスケジュール進行に支障がでないようにしぶしぶ取り組んでいたそうです。

ぜひ、院内で担う制作業務内容や流れは事前に確認してください。原稿作成(ライティング)、写真撮影、CMSへの登録などは分掌があいまいになりやすいので要注意です。当然、制作会社に任せる部分が多ければ金額として見積もりに上乗せされますので、低予算であれば院内スタッフで何とかするという選択になりますが、任せられる仕事と任せられない仕事は明らかにしておきましょう。私の場合は、おおまかに制作フェイズをわけたスケジュールを用意し、それぞれがいつ、何を担当するかを共有するようにしています。

院内で背負いきれない業務が発生する方法で進める制作会社でないか、は大切なポイントです。

 

公開後の更新体制をイメージする

ホームページの制作は数か月から半年程度の期間限定のプロジェクトとなることが多いでしょう。ですが、ホームページが公開されると「更新・運用・運営」と呼ばれる業務が無期限に続いていきます。こちらの方が圧倒的に長期間に渡る業務になるわけですが、この公開後の見込みが甘いと更新されないホームページへと進み出してしまいます。ここでは、CMSを導入していないホームページで、病院側に更新したい意志があるのに作業が進まないというケースを考えてみます。

実は制作会社は急な更新依頼など突発的な対応や、内容に合わせた継続的な更新が苦手です。

  • 制作会社は事業に密着した更新が苦手
  • 制作会社はスケジュールにない急な仕事が苦手

制作会社の多くは現状をベースにした改築や修繕よりもゼロから作ることの方が得意で、業種業界の特性に歩調を合わせて更新し続けることを得意とはしていません。「時間をかけて更新内容を事前に想定して最適化を図る」ことも敬遠されるため、ゼロからウェブサイトを制作するときと比べると効率が悪い仕事になり、手間の発生は、費用の発生につながり、コストパフォーマンスとして期待できない結果になります。

また、基本的に制作会社は、いま進めている案件をスケジュール通りに進めることを優先します。よって、予定外の急な更新依頼の優先順位は低く、病院・クリニック側にとっては「対応が遅い」という印象になります。

更新対応が遅く、ページ構造が破綻してくるなど、ほかの理由も相まって「作り直した方が早い・安い」と考え、リニューアルが推進されていく流れに収束していくことが多いようですが、ある程度の予算をかけた手前、数年間は納得がいかないかたちで更新を続けていき、急場をしのぐかたちで運用されているというホームページはたくさんあるのではないでしょうか。

臨時の休診、外来担当表、病院指標、医師の入退職など何をどれくらいの頻度で更新する可能性があるかを要件として伝え、それに対応できる更新体制を制作会社が構築できるかを確認しておいてください。

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よい制作パートナーをみつけるポイント

次のことを選定時の要件として考慮します。

  • 病院がやりたいことが明確に定まっているか(方針共有)
  • 何を制作会社に任せ、何を自前で用意するか(役割分担)
  • 公開後の更新内容・方法・頻度はどのようなものか(運用体制)

ホームページにまつわるトラブルは外からでは見えにくく、デザインが秀逸な病院は憧れの対象にすらなるかもしれませんが、外見からはそのホームページがしっかりと更新され、経営課題の解決に貢献しているかどうかを推し量ることは難しいものです。水面下では、制作会社との体制構築や役割分担といった意思疎通にかかわるトラブルを抱えているかもしれません。

ホームページ制作会社が病院に対して持っている知識は限定的です。最初から積極的な提案があるものと思いこまず、「制作会社を期待通りに動かすには」という視点で、目的や課題、あるいは心配なことなどを情報共有し、制作会社とひとつのチーム・委員会をつくる気持ちをもって、ホームページ制作プロジェクトに取り組んでいただければと思います。

 

--筆者--
高橋良
1976年生まれ。広告広報プランナー、制作ディレクター、医療経営士。
Twitterアカウント 病院広報バロンデセ で「医療経営コンサルタントが言及しない広報の考え方」「院内の広報担当が悩みやすい情報発信のノウハウ」を中心に情報提供。株式会社コミュネクスト(https://www.communext.co.jp)で病院やクリニックの広報・広告・採用支援事業に従事するほか、病院などでホームページ作成やアクセス解析活用の講師など。「公益をもって自らの利益とする」をミッションに掲げ、活動中。

(edited by Junko Yabuki & Masami Kosako)

 

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