こんにちは、Healthcare Compassの小迫です。
最近月に3本ほど寄稿いただけるようになり、自分自身の執筆スペースが落ちてきました。腕がなまらないように少しずつでも書かなければ・・・と思い、今回は私が最近仕事について感じたことを書いていきます。
20代のビジネスマンから持ち込まれるキャリア相談
最近、私も社会人歴が長くなってきたのか、20代の若者からキャリア相談されることが増えてきました。その内容は
- 周りのレベルが低いのですが、どうすればいいですか?
- 志が高い人が周りに見当たりません。転職したほうがいいでしょうか?
- 上司(またはもっと上の役職者)が全然リーダーシップを発揮してくれない。他の組織への異動届を出そうかと。。。
と言ったものです。
なぜ20代の人達がこんなことを考えるのか気になっていたのですが、元プロ陸上選手の為末大さんのブログがとても参考になりました。
どこを選ぶかで個人のパフォーマンスも変わってくる。人間は日頃一緒にいる人の影響を免れないからだ。
(中略)
どのような集団を選べばいいかというのは基本的には自分がこうなりたいと思う人がいる集団を選べばいい。人は一緒にいる人に影響され、次第に似てくるからだ。
確かにおっしゃる通り。これならコンサルティング会社などの専門性の高い集団に属したほうがいいのか?と悩んでしまいます。
私たちは働く場所を選ぶ権利があります。だから、所属している組織にフィットしなければ離れることができる。しかし、ひとつの疑問として、「より良い」組織に移れば、周りのレベルが上がり、全員が志高く、リーダーシップを発揮する上司の元で働けるのでしょうか?
日本の事業会社は「無い袖は振れない」
所属する組織を日本の事業会社にする場合、周りのレベルが上がり、全員が志高く、リーダーシップを発揮する上司の元で働ける可能性は低いと私は考えます。
理由は、日本の事業会社は常に「無い袖は振れない」状態に陥っているからです。
「無い袖は振れない」というのは、
実際にないものはどうにもしようがない。持っていないものは出せない。
という意味です。
私は新卒のころからずっと事業会社で働いてきました。ここでいう事業会社というのは、コンサルティング会社や代理店、金融機関以外の会社のことを指します。
事業会社で働いていていつも付きまとう問題があります。それは、
- 働き手が足りない
- 働く人のスキル(能力)が足りない
の2つです。
事業会社だから働き手やスキルが足りないというのは非常にもどかしいのです。ただ、専門スキルを身に着けた集団のコンサルティング会社や代理店、金融機関では労働力不足や能力不足とは起きにくいです。労働力や能力に対して対価を支払う事業会社がいるので、不足に対して補填しやすい構造になっています。
逆に事業会社には、「総合職」という日本独特のそれとなく能力の高い人達がたくさんいます。実際は、大学入学から大学卒業までは能力が高かった人たちが大半で、その後のスキルの習得を怠って「ただの人」になっていることが多いのが現状です。
そんな人材を抱えながら事業会社は売上や提供価値を増やすべく、いつも新しい課題に直面しています。新しい課題を前にスキルの習得を怠ってただの人たちが集まっても、著しい成果を出すことができません。また、そのために人を雇おうとしても人材の流動性の高くない日本では、能力をもった人をヘッドハントできることは少なく、「そこにいるメンバー」で事業を行わなければなりません。結果として、日本の事業会社では無い袖は振れない状態が慢性化してしまいます。
無い袖は振れない状態を嘆くだけでいいのか?
冒頭の20代の若者からキャリア相談のテーマに戻りましょう。
周りのレベルが低く、志も高くなく、上司はリーダーシップを発揮しない。だから転職や異動をしたほうがいい。無い袖が振れない組織で働いていても、自分自身が成長できないと嘆く若者は一定数います。
自分の所属する組織を嘆き、居場所を変えるのが唯一の解決策なのでしょうか?為末さんは同じブログの中で、こうも言っています。
集団が伸びる瞬間は、不思議と1番手ではなく、中堅ぐらいの選手が一気に伸びてムードを作り、みんなが伸びる。面白いのはスター選手が伸びても大した影響がないことだ。
(中略)
昨日まで自分と同じだった存在が活躍するとそうはならない。悔しさも大きいし、自分と昔は同じだったのに自分は何をやっているんだという気持ちと、あいつにやれるなら自分にもやれるんじゃないかという希望が生まれてくる。そしてそのうち幾人かが、本当に目標を達成し、チーム全体が伸びていく。要はリアリティのあるサクセスストーリーが生まれると、集団が活性化する。
引用:私のパフォーマンス理論 vol.16 -集団について- | 為末大・侍オフィシャルサイト
ここから私が感じたのは、自分のレベルアップのために「より良い」組織に移っても、また次の組織で「より良い」何かを求めてしまうだけ。レベルアップのために組織を移っていいのは、為末大のいう「1番手」の人だけだということです。
もし、自分のレベルが組織の中で一番でなく、志も視座も真ん中くらいで、全員をひっぱるリーダーシップを発揮していないとすれば、それはただ「愚痴」を言っているにすぎないのです。
そんな私も27歳のとき、会社の執行役員に「口調が他人事だよね」と言われました
ただ、私も新卒のころから27歳のときまで愚痴・不満を言う側でした。周りの人の視座や学習意欲、上司のリーダーシップを気にして、友人や上司に愚痴っていました(あぁ、情けない・・・)。
27歳のとき会社でリーダーシップ研修を受けている際に、研修を受け持ってくださった担当執行役員にこう言われましたのを、強烈に覚えています。
「自分について語ってるとき、いつも口調が他人事だよね。なんで?もっと自分を主語にしないと。」
この言葉を咀嚼して、トライ・アンド・エラーを繰り返して、納得するまで2年ほどかかりました。いまはその意味をはっきり理解できます。
- 自分は組織の中で誰よりもレベルアップする努力をしているか?
- 自分の視座は誰よりも高いのか?
- 組織を活性化したり推進したりするために、リスクを取っているか?リーダーシップを発揮しているか?
この質問にすべてYesと答えられるとき、初めて仕事が「他人事」から「自分事」に変わるということがわかりました。
無い袖は振れない組織で、組織を好転させるには?
日本企業(外資資本の企業でないという意味)で事業会社に勤めているなら、新しい売上や価値を生み出そうとすればするほど、働き手や働いている人のスキルが足りない状態になりがちです。
日系事業会社で働くことをを選んでいる時点で、この前提は変えにくい。では、無い袖は振れないことを前提にして何ができるでしょうか?
率先していろんなことをやってみるに尽きます。日系の事業会社であれば、クビになることはありません。率先して仕事をして、フルスイングしても、リスクなんて実質皆無です。むしろ、仕事を率先しておこない、組織内でリーダーシップを発揮するだけで、加点をもらえることのほうが多いでしょう。
もちろん、人にはライフステージがあります。いつもいつも挑戦するわけにはいかず、プライベートを優先せざる得ない状況もあります。そのときはそのときで、日系の事業会社の制度や文化を大いに利用すればいい。
今回の記事の最後に伝えたいのは、「自分の不安や悩みを他人や組織のせいにするな」ということと「自分が率先して仕事をしても、リスクなんてない」ということです。その2つを乗り越えれば、仕事を自分事化できます。
そして仕事を自分事化して、無い袖は振れない組織を好転させチームで良い結果を生み出しましょう。
※ライフステージの変化や労働環境のブラックさに耐えられない場合は、成長とか無視して転職/異動してください。
--筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に従事し、ITへの理解を深める。並行して、病院経営効率化のための一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立し活動。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。
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