病院経営ウェブマガジン“Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)”

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Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

DPC病院として生き残る上での課題とは

こんにちは、中村実穂です。

私は看護師免許を持ちつつ、臨床従事後、病院向けDPC支援や採用コンサルティング業務に従事し、今は医療機器を開発するベンチャー企業で働いています。

多数のDPC病院の実態を知る中で、DPC病院として有り続けることの管理・現場調整の難しさや、DPCの枠組み内で利益を生むことの難しさを感じました。

本日は、その第一弾として、DPCの概要について、改めて整理していきたいと思います。

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そもそもDPCとは

DPC(Diagnosis、Procedure、Combination )とは、包括医療費支払い制度方式のことです。
日本では、医療制度上、保険適用の医療行為等にそれぞれの診療報酬点数が定められています。
クリニックなどの外来診療では、単純に各診療報酬点数の足し算×10円が料金として発生します。
それに対してDPC病院での入院診療では、診療・治療をおこなう中で中心となった病名と治療内容を決め、その決めた内容に対して、一日あたりの定額点数が付与されます。

業界では、その仕組みを「丸める」とも表現します。つまりは「この病気にかかった時は、この料金パッケージになりますよ。」というものです。もちろん、追加でDPC範囲外の費用を含め、出来高部分も発生します。

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(引用:https://medical.mt-pharma.co.jp/support/dpc-manual/pdf_2018/dpc_14.pdf

この制度は単なる支払い方式の統一化だけではなく、以下の目的として導入されている制度です。

  • 国として標準的な医療の提供を行なうこと
  • 医療の透明化を図ること、
  • 各病院の診療データを国に集約し活用すること

全てのクリニック/病院がこの支払い制度を利用しているわけではなく、いくつかの条件をクリアした病院が、自分らで望み、申請を行うことにより、正式にDPC病院となることができます。

 

DPC病院の種類

そんなDPC病院には大きく、以下の3種類があり、それぞれ簡単にご説明します。

大学病院本院群

その名の通り、大学病院はここに所属します。

DPC特定病院群

以下の4つの実績要件をすべて満たし、かつ大学病院本院群の最低値を上回る病院のことをいいます。

  • 診療密度
  • 医師研修の実施
  • 医療技術の実施(外科/内科別の症例数や割合等を中心に算出)
  • 補正複雑性指数
DPC標準病院群

上記以外のDPC病院はここに所属します。

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(引用:https://medical.mt-pharma.co.jp/support/dpc-manual/pdf_2018/dpc_14.pdf

DPC病院は、病院のブランディング・利益の両面から、以下の2点が目標となります。

  • 1つ上の医療機関群を目指すこと
  • 同一群の中で、上位群に入ること

1つ上の医療機関群を目指すことは、実質的には「DPC標準病院群」だけの目標となり、一部のDPC標準病院群にしか目指せない目標でもあります。(500床超えの超急性期病院等)
そのため、ほとんどの病院は「同一群の中で、上位群に入ること」を目標としています。

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DPC同群内での順位を上げるためには

上記3つの群に割り振られることで、何がどう変わるのかというと、DPCで包括算定する際の傾斜係数の影響します。

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 この、傾斜係数(医療機関別係数)の内訳は下記になります。

医療機関別係数= 基礎係数 + 機能評価係数Ⅰ + 機能評価係数Ⅱ +激変緩和係数

言わずもがな、医療機関別係数が高いほど、高収益に繋がります。
基礎係数は、同一群内では同じ係数となるため、同郡内で順位を上げるためには、「機能評価係数ⅠとⅡ」を上げる必要があります。

 

機能評価係数Ⅰを上げるためには

・医師の研修病院であるか
・看護体制の充実さ
・医師事務作業補助加算の取得有無
・後発医薬品使用体制加算
などの複数項目を一つずつ取得していくことが必要になります。

ゴールは、自院で取得できる加算は、すべて取得することです。
機能評価係数Ⅰに不安がある病院は、取得できる加算を見直してみてください。

参考:機能評価係数Ⅰに関連する加算等項目
https://medical.mt-pharma.co.jp/support/dpc-manual/pdf_2018/dpc_15.pdf

 

機能評価係数Ⅱを上げるためには

医療機関側の努力によって上げることができるのが「機能評価係数Ⅱ」となります。
ここでは、話の方向性を揃えるために、「DPC標準病院群」の視点でのお話をします。
まず、そもそも前項でお話した「機能評価係数Ⅱ」とは、以下の6係数で構成されています。

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(引用:https://www.medwatch.jp/?p=22813

保険診療係数

保険診療係数はすべての病院が高係数を目指せる項目です。
・厚労省より指定のある病院情報を公開すること
・「部位不明コード」等を減らし適切なDPCデータを作成すること
を目指して病院サイト等を運営しましょう。

病院標準群においては、全国データにおける最大値=中央値となっており、
相当数の病院が最大値を取れる努力をしています。*1)

効率性係数

効率性係数は、在院日数に関する指標です。

  • 「診断分類群」で定められる入院期間に、自院の平均在院日数が収まっているか
  • 他院比較し、どれほど短縮できているか

を評価する項目です。

特に診療報酬改定のタイミングでDPCの各期間基準が変更されるため注意が必要です。
各改定内容を押さえ、基準内の日数で退院(転棟)できるように、メディカルスタッフと連携することが必要です。
また、改訂のタイミングで院内のクリニカルパスを見直す必要もあります。DPCの期間Ⅰ~Ⅲの日数を参考にしながら、その日数範囲内でクリニカルパスを終えられるような内容に、再構成することが必要です。

医事課の皆さんにとってこの内容はクリニカルな内容も多く、取り掛かりにくい部分もあるかと思います。

  • 疾病ガイドラインや最新の論文
  • 他病院の平均在院日数

などを説明根拠として利用し、メディカルスタッフを説得・納得させることも必要です。

複雑性係数

複雑性係数は内容がやや捉えづらい係数ですが、簡単に説明すると、診療難易度の高い疾病(=ここでは、出来高点数に換算すると、大きな点数になる疾病)の患者がどれ程入院しているか、というレベルを測っています。
この係数は、大学病院や中核病院、専門病院では高係数を狙いやすい項目です。
しかし、その他の小規模病院や、急性期度の低い病院では低係数となる傾向にあります。

カバー率係数

カバー率係数は、DPCの登録病名のばらつき具合をみる係数です。いろいろな疾病に対応している病院を評価する係数です。一般的に、専門病院は獲得しづらい係数となります。
 改善方法として、DPCの登録病名が、本当に主病名であるのかを確認することが可能です。例えば、「単なる転倒による骨折」と「脳梗塞起因の転倒による骨折」では主病名が変わってきます。院内で、病名登録の方法にばらつきがあるようでしたら、一つの方法として登録方法の水準を高める努力をすることです。

救急医療係数

この係数は、どの程度、救急医療度の高い患者を受け入れているかを測る指標です。一般に、救急医療に関する入院加算(例:救急医療管理加算、ハイケアユニット入院医療管理料など)を算定する患者の数がどの程度いるのかを評価する係数です。

こちらは、救急医療管理加算の漏れがないかどうかを院内で確認する必要があります。
改善方法として、救急外来で加算取得に関するチェックシート等の利用があります。

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救急医療管理加算チェックシート例

利用方法:看護師が以下の項目のうち、当てはまる部分にレ点をいれる
     医師がレ点項目をカルテに記載
     医事課が、医師が記載したレ点項目が、必要十分であるかどうかを確認
【救急医療管理加算1の対象患者】
ア 吐血,喀血又は重篤な脱水で全身状態不良の状態
イ 意識障害又は昏睡
ウ 呼吸不全又は心不全で重篤な状態
エ 急性薬物中毒
オ ショック
カ 重篤な代謝障害(肝不全,腎不全,重症糖尿病等)
キ 広範囲熱傷
ク 外傷,破傷風等で重篤な状態
ケ 緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA療法を
必要とする状態
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上記が主な係数項目となります。
病院の特性上、これらの係数の調整が難しい場合はこのままDPC病床とするのか、を考えるきっかけにしてもよいかもしれません。
昨今は、地域包括ケア病床をはじめとするポストアキュートの病床不足により、急性期に近い加算の取得も可能となってきました。病院の特性に合わせて、地域包括ケア病床や、出来高算定なども視野に入れてみましょう。

地域医療係数

地域内の病院毎で係数が決まっている地域医療係数は、各病院の努力が難しいところがあるでしょう。

 

まとめ

DPC制度は日本の医療の標準化を目的として生まれた制度であり、各係数の標準偏差内における自院の立ち位置によって、病院の収益に影響が出る制度でもあります。

自院の強み/弱みを把握した上で、伸ばせる係数を理解し、どこまで伸ばせるのか・どうやったら伸ばせるのか、積極的な思考で考えていくことが必要です。

世の中には、この領域のコンサルティング会社も多く存在するので、一時的に力や知識を借りながら、自院内にノウハウを蓄積していくことも良い手法だと思います。

ぜひ、制度を正しく理解し、自院の努力を評価・還元してもらえるような算定を目指すような病院であっていただきたいと思います。

 

参考文献

--筆者--
中村 実穂
1992年生まれ。学生時代より、医療業界を経営・ビジネス視点で支えることに興味を持つ。国立大学卒業後、聖隷浜松病院ICUにて看護師として勤務。その後、原体験に立ち返り、病院経営分野へ進むべく、エムスリーキャリア(株)経営支援事業部へ転職。全国200以上の病院訪問をしながら、複数の病院の採用コンサルティングに従事。また、並行しDPC領域コンサルティングの新規事業立ち上げに従事。
より臨床現場に近いところで事業開発に携わりたいと思い、2018年10月アイリス(株)に入職。

 

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