病院経営ウェブマガジン“Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)”

Healthcare Compass (ヘルスケア・コンパス)。病院経営ウェブマガジン。病院経営の中でも急性期病院の経営・運営に携わる人のためのメディアです。

Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

病院経営の実務:アメリカ留学で得られるスキルと経験

病院経営と聞いてどういう業務を思い浮かべますか?

  • DPCの分析をして、集患戦略を考えること
  • 財務諸表を読み解いて、経営改善をすること
  • 患者満足度向上のための調査とPDCAを回すこと

自分が担当する業務を中心に「これをやってこそ、病院経営だ!」という主張がそれぞれあると思っています。

実際、私が新卒時代に知り合った病院経営の諸先輩方と話をしても、病院経営の醍醐味はこれだと思っていることは異なっています。

 

自己紹介が遅くなりました、Healthcare Compass 編集長の小迫です。

今回の記事は、私の新卒時代の上司が、アメリカへMHA(Master of Healthcare Administration:病院経営学修士)留学していたときの話を紹介します。(MHAについては、こちらをご参照ください:病院事務職のキャリア:私の考える大学院(修士号)の選択肢

MHAプログラムの中で、実際に病院でインターンをすることが必須だったようです。

私の病院経営の基礎は、この上司から学びました。以下で紹介するインターンの話が好きで、飲みながら何度か話をしてもらったのを覚えています。

ぜひ本ウェブマガジンを読んでいる方にも共有したく、転載の許可をいただきました。「病院経営の実務:アメリカ留学で得られるスキルと経験」をお楽しみください。

f:id:massy535:20190526224209j:plain
 

--以下、転載--

サマーインターンシップ体験談 林譲也

私が通っていたミネソタ大学MHAプログラムの骨格となるコースは、なんと言っても「Problem Solving」(問題解決力)です。

ミネソタ大学MHAでは、その長~い歴史の中で練り上げられた「問題解決のための14ステップ」というフレームワークを1学期から教室で、またOB/OGの指導のもとミネソタ周辺の医療機関で実践しながら2年間をかけて習得するのですが、

夏期インターンシップ(ミネソタではSummer Residencyと呼ばれています。)は学生がたった一人で外部の医療機関に乗り込み、自身の実力を試す第一の登竜門として位置づけられています。もち ろん評価の対象となり、必須単位の一部となるため、現場での実作業とともに20ページから100ページを超えるペーパーワークを同時進行するのが大変でした。

サマーレジデンシーでは原則として学生が各自で行き先を見つけてきます。すなわちプチ就職活動をして行き先を探しました。

卒業生がいる医療機関を中心に、また時には全然関係のない医療機関に飛び込みで連絡をして、自身の得意分野、興味がある分野、13~15週間ぐらいで関わらせてもらえるプロジェクトの有無、期間中の給与や住居について、などなど、基本的には自分が気に入るまで、とことん相手方の担当者と話を詰めてから参加しますので、学生の大部分は自分のしたいこと、現在相手方の組織が抱えている問題、現在進行中のプロジェクトについて、それらに対する自分の関わり方、などをきちんと理解した上で、しかも夏休み前までにある程度のリサーチを終えてからサマーレジデンシーに突入することができました。

私の場合は北カリフォルニア、バークレーの近くにある急性期病院+複数の介護施設というグループにサマーレジデンシーにいくことになりましたが、行く直前 まではインターナショナルマーケットの開拓(特にカリフォルニアですので患者だけでなく看護師をはじめとした従業員の採用面で)や患者に外国人が多いため ラングエッジサービスをはじめとするカスタマーリレーション+サービスをする予定になっていました。

ところが行って1週間もしない間にインターナショナルマーケットの問題も、患者に対するラングエッジサービスに対する問題も、実は問題らしい問題は無く、それらのサービスを充実させるためのフィリピンや中国の看護学校との契約書の詳細確認や施設内でボランティアによる翻訳通訳サービスをコーディネートする ことで私に与えられた課題は終わってしまったのです。

そんな簡単なことでしたのでペーパーもかけません。何よりも問題が無いのですから問題解決する必要すらなかったのです。

そこからの3ヶ月間、何をしようか考えました。

ミネソタでは生徒に教授陣から1名、OBOGから1名、そしてサマーレジデンシー中はインターンシップ先で勤務している、またはその施設の近くにいる OBOGが指導官として夏のインターンシップをサポートしてくれます。それらのサポーターや、特にペーパーを評価する担当の教授にいろいろと相談し、結果 として残された時間は短いがその組織内で問題をみつけることから始め、それを解決できるように努力してみよう、と言うことになりました。

すぐ翌日から私のサマーレジデンシー受入れの責任者になっているアドミニストレーターに相談し、「既に1週間がたち、職員の顔も覚えてきた。残された時間で何かしらの問題解決を手伝いたい」と言ったところ、たちまち2つの問題を言い渡されました。

1つ目は雇用主と従業員、そして労働組合について、就業規則と労働基準法の矛盾によって雇用主も、従業員も、そして労働組合も不具合を感じている、という問題でした。

2つ目は物流の効率化。早く、安く、正確に、無駄のないように、グループ全体にSPDを導入する必要がある、という課題でした。

アドミニストレーターと話しているうちに、1つでいいのに両方を同時進行で、担当することになりました。

いろいろと話を聞きまわった結果、労働組合代表、看護部長、人事課長、グループ法人事務所長、労務管理者、職員代表、などなどで1グループ。各施設の物品 管理および購買担当者、看護師長で1グループ。チームを発足してからは日常業務で忙しい皆さんに代わって私がリサーチをし、報告書をまとめ、プレゼンを し、全員の意見をまとめ、それらを従業員に伝え、その対策案の導入を毎日確認し、定期的にその効果が良くても悪くても職員全員に配信しました。結果として 1つ目のプロジェクトは就業規則の改訂と普及がより公平・公正な労働環境につながり、2つ目の問題はダイレクトに材料費だけで月間3~4千万円のコスト削 減につながりました。そしてそれらをペーパーにまとめ、無事にサマーレジデンシーを終えることができたのです。

私の場合、インターンシップ先を見つけることが一番大変でした。期間中の報酬、住居、取組んでみたいプロジェクトの難易度や規模を出来る限り自信の望むものに近い形でアレンジするのが難しく、時間がかかりました。

次の苦労は、インターンシップ先にたどり着いたものの、何の指示ももらえず、自分でも何をしたらいいのかわからない、ということ。

これらの原因として考えられるのは、

  1. 私が何をしたいのかが伝わっていない、
  2. 私が何をしたいのかは伝わっているが、受入れ先の人たちが問題を認識してお らず私にくれるネタがない、
  3. 解決すべき問題を認識してはいるものの私に対する信頼がない、

などでしょうか。

  1. を感じた場合は、自分の受入担当者に相談す ること、
  2. を感じた場合は自身でいろいろと患者や現場職員と話をして何かしらの不都合や不具合が無いかを自分なりに探してみること、
  3. については自身の バックグラウンドをきちんとお話したり、組織内の問題に対して自身の見解を伝えたり、与えられた課題に対して誠実に答えることを心がけたりすること、

で解消できると思います。

また、インターンシップ先の受入責任者は、できる限り上級職の方を見つけることが大切だと思います。これは、上級職であればあるほど、現場レベルではな く、組織全体にかかわるアドミニストレイティブな視点で問題点を認識しておられるので、将来の管理職をめざす私たちのためになるレベルの問題を与えていた だけること、そして実際にインターンシップが始まり、プロジェクトが動き始めた時の組織的なサポートが容易に得られること、そして成功した暁には将来の職 場探しに役立つことがあるから、です。

ハッタリを利かせて、ご自身が出来そうも無い、と感じるぐらい大きい問題にぜひぜひ取組んでください。思い切ってチャレンジしていただいて、うまく解決できればバンバンザイ。だめなら3ヶ月でハイおさらば。どちらにせよマイナスはありません。

小さいことをもう1つ。インターンシップに行くと、重要な会議への出席が許される代わりに、ミーティングの議事録を取ることになったりします。

これをうまくやる秘訣は、ICレコーダーを用いて録音し、ゆっくりとサマライズしながら書き上げる、というのが1つ。

またはそうして書いたものを、これまで議事録を書いていた人に見せて確認してもらってから提出するのが1つ。

最後に可能であれば、是非是非ギブアップ宣言をし、もともと議事録を取っていた人にお願いしましょう!

どちらにせよ大切なことは「私は英語が下手なのでICレコーダーで取ってから時間をかけて書いています。またそれをどなたかに確認してもらう必要があります。」ということを早い段階でミーティング長にお知らせしておき、それでもがんばりマス!ということを皆さんに知っていただくことです。

最初に言い訳しておくことで、自分の肩の荷もおり、不出来なものを提出した際のエクスキューズにもなり、でも努力しようとする姿勢を見せることができました。

米国人は英語ができないことに対してネガティブな評価をつけることはありません。私たちに英語を教えるのが議事録作成の目的ではなく、スピーディーに正しい情報を整理し、記録することが議事録作成の目的です。英語がうまくない外国人ほど気にしますが、そんな人が会社の中にさえゴロゴロいるのがアメリカであ り、米国人は言葉の出来、不出来で人を評価することはあまりありません。

会議には出席し、メモは取るが、議事録に関してはギブアップ宣言をして誰かのサポートを得ましょう。そして会議の席での発言が出来なくても、代わりに会議 終了後にキーパーソンに会議中に感じた質問や意見を伝えにいきましょう。ストレスやプレッシャーを避けて、リラックスした状態の方が意見の交換は容易ですし、大変良い交流が生まれると思います。

自身の得意、不得意を関係者にきちんと伝え、オープンな態度で接することこそが、私たちの誠意を相手側に伝える第一歩だと思います。

ぜひ、試してみてください。

--転載終わり--

 

新卒時代、仕事の仕方が右も左も分からない頃、この上司から手取り足取り仕事の仕方を教えてもらいました。メールの書き方やアポイントメントのとり方、海外から来客を受け入れるマナーまで学ぶことができました。

いろいろ仕事を教えていただいた中でも、上司の留学時代の話は私個人にとって大きなモチベーションでした。自分もキャリアを重ねて、学位を取得して、さらなる大きな仕事をしたい、という希望が持てました。そのおかげで私も修士号を取ることができたといっても過言ではありません。

病院経営に関わる読者が少しずつ増えてきたので、ぜひこの話を共有したいと思い、今回記事にして紹介しました。
感想がございましたら、ぜひTwitterやFacebookでシェアいただけると嬉しいです!

  

--筆者--
小迫 正実 (こさこ まさみ)
高校生で訪れたフィリピンのスラム街での体験から、人の命に関わる分野から経済を動かし、世界を変えたいというビジョンを抱く。
2012年慶應義塾大学卒業後、聖路加国際病院で医療の質を司るQIセンターの立ち上げに従事。分析業務から、データ×ITに課題解決の糸口を感じ2014年にヤフーに転職。広告データ事業に従事し、ITへの理解を深める。並行して、病院経営効率化のための一般社団法人Healthcare Opsを2017年に設立し活動。2018年には公衆衛生修士をリバプール大学のオンラインコースで取得。

 

Healthcare Compassでは皆様からの投稿をお待ちしております。

こんなことを伝えたい、書いてみたい、という方は healthcare_ops@yahoo.co.jp にまずはお知らせ下さい。もう書いてみた、という方はそのままお送りください。編集部で頂いた内容を検討し、ご連絡します。

 

“Healthcare Compass”では過去に公開した記事をまとめて、メールで配信しています。

登録はこちらから