M3(エムスリー)という会社を知っていますか?
医療業界に関わりのある方なら一度は耳にしたことがある会社かと思います。
医師向けのオンラインポータル m3.com で知っている方も多いと思いますが、インターネットビジネスだけでなく、最近では治験やキャリア支援、先端医療までビジネスの領域を広げています。
https://corporate.m3.com/ir/library/presentation/pdf/20181025_05.pdf
2019年1月には、LINEとジョイントベンチャーを立ち上げたのも、注目を浴びました。
https://corporate.m3.com/ir/release/2019/pdf/20190125_02.pdf
医療業界に常にイノベーションを起こし続ける会社として、業界内外から一目置かれる存在です。
しかし、実際に病院側がどのようにエムスリーを活用しているか、知る機会は少ないかと思います。
今回は、医師向けのオンラインポータル m3.com を使った集患対策についてご紹介します。
以下の内容は、一般社団法人Healthcare Opsが運営する病院経営運用事例集“Collective Healthcare Ops”から転載です。
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都市部急性期病院の集患対策
〜定期刊行物送付・医療機関訪問でない、新たなタッチポイントの検討〜
氏名:岡田太郎
所属:聖路加国際病院
要旨
- 前提:都市部急性期病院
- 領域:地域連携室
- 課題:急性期としての集患対策
- 対応:外部医師との新たなタッチポイントの検討
- 結果:効率的な集患の可能性有(ただし既存ツール要)
前提
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内部環境:520床 都市型の中規模病院
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急性期病院であり救急医療、合併症や複合疾患を取り扱う。
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学部付属・特定機能病院でない
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患者志向
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外部環境:区中央部(港区・千代田区・中央区)には急性期病院が多数。
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∴ 入院患者に占める中央区の患者は20%程度
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そして、 患者は 23区より都外から来る方が多い。
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課題
紹介患者の低迷、手術件数の減少
背景
少子高齢化、都市部でも急性期病院の競争は激化
救急医療、合併症や複合疾患に対応できる急性期病院は少ない
少子高齢 = 職員も減る ⇒ 効率化・標準化
状況の分析
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既に中央区のクリニックは登録医として登録済み。
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電話の声をきいて、誰だかわかる開業医もいる。
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病院として営業や広報の人員を増やしたいが、業務として受入や問い合わせは増加している。
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また、中央区を超えての営業活動は非効率であり現実的でない
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ルート営業は必要だけど、足で稼ぐ時代ではない。
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1日に回れる施設 月60施設 ( = 3施設(朝・昼・晩) 3回×20日) が限界。
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他部署全般に人材不足。
アプローチ
定期刊行物送付・医療機関訪問でない、新たなタッチポイントの検討した。
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医師のポータルサイト、エムスリーとの共同で実施。
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会員医師にむけての直接の情報発信(医師・手技など)。
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半年で、エムスリーポータルサイトに12コンテンツの情報を配信
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結果
12コンテンツを配信の結果、
- 登録 約1万名 4000施設
- 既読アンケート回収 約3000名
- 問い合わせ 約200名
現時点で、紹介実績につながったものは、高度技術ではなく、女性器脱など。
また、アンケート結果により、開業医の求める情報が把握できた。
アンケート抜粋
子宮脱の患者さんは、月に4~5人いるので、どこに紹介すればいいかわかり、とてもためになった。(東京都)
患者さんからの訴えはないのですが、実際は困っている患者さんがいるかもしんないと思いました。今後、40歳以上の女性には、こちらから腹圧性尿失禁に関して訊いてみたいと思います。(埼玉県)
議論の残る部分
エムスリー非会員医師には別の情報発信が必要
患者への直接配信が必要
集患対策後の受診コーディネート、病棟や手術室の調整に時間がかかる問題も。
また、コンテンツ作成には時間がかかっている。
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医師向けのオンラインポータル m3.com による、集患対策の事例、いかがでしたか?
医療連携で、紹介率をあげたい病院にとって、他病院や開業医との接点はとても重要です。
ただ、人手も限られている中で、効率的に情報を発信し患者を集めるのは一苦労。
今回は、そんな状況の中、インターネットサービスをうまく利用した集患対策について紹介しました。
これからも、病院経営/医療経営ブログ“Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)”では、病院経営に関する運用事例を紹介していきます。
いままでに紹介した事例はこちらから参照できます。
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