病院経営/医療経営ブログメディア“Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)”では、病院経営に関する運用事例も紹介しています。
今回は、「医療情報管理のカルテ監査運用」についてです。
保険診療を提供する医療機関では、カルテ(診療録)への記載の質を担保する必要があります。
というのも、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の「保険診療の理解のために【医科】(平成30年度) 」の中に以下のように記載されています。
(1) 診療録とは
診療録(カルテ)は、診療経過の記録であると同時に、診療報酬請求の根拠でもある。診療事実に基づいて必要事項を適切に記載していなければ、不正請求の疑いを招くおそれがある。(中略)
(3) 記載上の留意点(一例)
- 診療の都度、診療の経過を記載する。必然的に、外来患者であれば受診の都度、入院患者であれば原則として毎日、診療録の記載がなされることになる。
- 慢性期入院患者、集中治療室入室中の患者、慢性疾患で長期通院中の患者等についても、診療録の記載が必要なことは当然である。
- 診療録に記載すべき事項が、算定要件として定められている診療報酬点数の項目があることに留意する。
- 修正等の履歴が確認できるよう、記載はペン等で行うとともに、修正は修正液・貼り紙等を用いず二重線で行う。
- 責任の所在を明確にするため、記載の都度必ず署名を行う。
書いてあることは理解しつつも、実際の医療現場で上記のことを完全にこなしていくのはハードルが高いです。
なので、医療情報管理室や医事課、メディカルクラークなどが診療録の記載に漏れがないかチェック体制をひいて質を担保しているのが、日本の医療の現状でしょう(たぶん、世界もそう・・・)。
今回は、そんな診療録の監査の運用にまつわる事例の紹介です。
以下の内容は、一般社団法人Healthcare Opsが運営する病院経営運用事例集“Collective Healthcare Ops”から転載です。
---
医療情報管理:量的カルテ監査運用100%へ
氏名:御牧 秀匡
所属:施設名/部署名 白岡中央総合病院 医療情報管理課
要旨
- 前提:250床 総合病院 医療情報管理課 3名(管理士2名 パート1名)
- 課題:量的監査シートを全退院患者に100%作成できないこと
- 対応:業務偏りの分散 重複項目の削除 自部署のマンパワーに対する業務のスリム化・効率化
- 結果:100%には未達だが、運用は少しずつ回りだしてきている。しかし見直しが必要な点はまだ多い。
前提
内部環境:
- 250床 医療情報管理課 3名(管理士2名 パート1名)
- 電子カルテになって約1年半
- カルテ監査は病棟・医事課・医療情報管理課の三部署でチェックしている
課題
量的監査シートを全退院患者に100%作成できないこと
背景
電子カルテになって
- →病棟の監査者が各担当看護師から病棟所属長のみになった
- →医事課も監査することになった
6月に業務を引き継いだばかりで、
- →問題点・運用の把握・変更に時間がかかった
状況の分析
- 業務が所属長に偏り過ぎているのではないか
- 看護部・医事課・管理部でチェックが重複しているため、流れが悪くなっているのではないか
- 医療情報管理課の業務も無駄な部分、効率化できる部分があるのではないか。
→管理課の業務を覚えながら、委員会の資料を作る時間の確保など、自分の作業の見直しや、効率化・仕組み化が追い付かないまま通常業務が蓄積されてしまっている(2次監査)。 - 監査項目が多いのではないか。
アプローチ
【事前監査】看護部の監査者を、受持ちの看護師へ変更し、偏りを分散させる様変更
【一次監査】医事課のチェック項目から看護部との重複項目を削除した
【二次(最終)監査】医療情報管理課の業務も無駄な報告や作業を少しずつ見直し・削減している
結果
100%には未達だが、運用は少しずつ回りだしてきている
議論の残る部分
看護師・医事課がDrの記録を監査するのは必須なのか?
各専門の分野を見直せばよいのではないか?
運用とマンパワーに対して項目数は全項目が必須か?
量的な監査であれば、システムで監査も可能なのではないか?
---
診療録の監査の運用に関する運用事例、いかがでしたか?
組織によって監査の運用とその質は違うはずです。「べき」論で語って、上から業務を落とすことも可能ですが、実際は現場担当者と話し合いを重ねて少しずつ運用を効率化させていく組織がほとんどでしょう。
唯一の正解がない分野ではあります。ただ、わたしとしては、日々の業務をしっかり見直している組織があることをこの事例を通してお伝えしたかったです。
これからも、病院経営/医療経営ブログ“Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)”では、病院経営に関する運用事例を紹介していきます。