こんにちは、NTT東日本関東病院の野村英雄です。
これまで、様々な病院で働く医療者に絡めながら病院再興計画を述べてきました。
- 第0回:日本の病院は病院経営超困難時代へ。今こそ、病院再興計画を!
- 第1回:病院再興計画における委員会運営について
- 第2回:病院再興計画における診療情報管理士の役割
- 第3回:病院再興計画における医師事務作業補助者の役割
- 第4回:病院再興計画における人材不足を補うロボットの活用
- 第5回:病院再興計画における施設基準管理
各計画を積み上げてみると、病院再興計画は以下の3つの要素に大別することができます。
- 組織運営
- 情報管理
- 負担軽減
私は、3つの要素を満たすことで、「患者さんと働くスタッフにとって魅力的な病院」を作り出すベースができると考えています。
最終回は、全5回の内容を少し振り返りながら、病院再興計画の3つの要素を順番にご説明します。
1. 組織運営
第1回の委員会運営では、多職種で構成される横断型の組織のまとめ方として「多様性のあるメンバーで構成される持続可能な組織のポイント」をご紹介しました。
私が所属するがんコア委員会が、がんゲノム診療体制の構築にポイントを活用したところ、東大病院の連携先内では1番の早さで体制整備をすることができました。
第5回の施設基準管理では、診療報酬の算定に必要な「施設基準」のことを述べました。
先月、医事課より院内全体に施設基準の重要性を幅広く働きかけた結果、医療者より「実は、取れると思っていたんだけど」という掘り出し物が3つもありました。
2019年1月からの増収にむけて、算定準備を進めております。
組織運営は、スタッフ自身が自発的に動ける仕組み作りと施設基準を徹底することが重要です。
2. 情報管理
第2回の診療情報管理士の役割では、病院経営陣に有益な情報を与えるために、分析の重要性とダッシュボードの必要性を述べました。
時代の変化や要請に敏感に対応できるためのデータは、適切に分析された解釈付きの情報が必要です。
しかし、ある人には、あたりまえの情報でも、ある人には初見というのは多々あります。また、伝わっても情報量も多すぎて逆に不自由になっています。
情報管理は、情報伝達方法を工夫する意識が重要です。
事務職のなかでは、施設基準を共通の言語(ルール)にする工夫をしたところ、お互いの理解が深まり、以前に比べてコミュニケーションが密になりました。
3. 負担軽減
第3回の医師事務作業補助者の役割では、医師事務作業補助者による加算代行入力における医師の負担軽減策をご紹介しました。
また、第4回の人材不足を補うロボットの活用では、RPA(Robotic Process Automation)ツールを活用した単純作業の業務効率化の負担軽減策について述べました。
病院再興計画は、委員会や算定、KPI管理など、どうしても攻めの要素が強くなります。攻めてばかりでは、職員も疲弊します。
売上を追う一方で、職員の負担軽減のため、年1回は計画的に対策を行ないましょう。
少しでもスタッフ個人の心理的負担をやわらげてあげることも重要です。
まとめ
病院再興計画の3つの要素として組織運営・情報管理・負担軽減についてお話ししました。
- 組織運営は、スタッフ自身が自発的に動ける仕組みと施設基準遵守の徹底が重要である。
- 情報管理は、情報伝達方法を工夫する意識が重要である。
- 負担軽減は、年1回は計画的に対策を行なうことで、少しでもスタッフ個人の心理的負担をやわらげてあげる。
私からご紹介しました病院再興計画のうち、1つでもみなさんの病院再興計画にお役立てできる内容があれば幸いです。
いちばん大切なのは、長期計画
ただし、3つの要素が揃ったとしても、病院の再興は達成できません。長期的に、病院をどのようにしたいかというビジョンと計画が必要です。
ビジョンとは、スタッフ全員の道しるべとしてリーダーが表明することです。
リーダーがそのビジョンを語れば、その覚悟の熱が周囲に伝播するなど、なるべく大きなビジョンを設定しましょう。
例えば、こんなビジョンはどうでしょうか?
「がん拠点病院として国立がんセンターに次ぐ病院になろう。」
次に、計画とは、ビジョン実現のためのステップの目標を設定することです。
目標設定での注意点は、多くの方が達成したい目標にすることです。
つまり、目指そうとする空気を醸成させることも大切です。
作成ポイントとしては、組織の利益の先に、働いたスタッフの利益もみえるような目標にすることです。
例えば、こんな目標を立てたことがあります。
「来月のがん患者指導管理料の算定を働きかけて、算定率10%増えたら焼肉に行くぞ。」
千里の道も一歩から。
まずは、ビジョンと計画の立案から始めてみてはいかがでしょうか。
最後に
私は第0回で、なぜ病院を再興する必要があるか述べました。
病院は、地域住民の生活にとって、『安心の砦』であり続けなければなりません。
私は、経営赤字を理由に病院が閉鎖されないように、病院を再興できる方法を提案したいと述べました。
究極の再興方法は、職員が患者さんのことをどれほど想えるかです。
儲けるためだけでなく、常に職員自身が一患者になりうることを考えられるような病院こそが理想的だと思います。
もし、再興計画に迷いが生じたら、自分自身が病気になったときに、どうして欲しいか自問自答してみてください。そんな病院に、地域住民の方々はかかりたいと思います。
様々な問題に果敢に挑み、患者を第一に想える病院になれるように、供にアップデートしましょう!
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Healthcare Ops 代表の小迫です。
野村氏の病院再興計画、いかがでしたか?
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