Healthcare Opsの小迫です。
今回は、働き方改革の一つの施策例、仮眠の導入についてご紹介します。
背景
2017年、東京の多くの病院に労働基準監督署の立ち入り調査が行われました。改善策を迫られた医療機関も数多いと聞きます。
実際、私の古巣、聖路加国際病院も土曜外来を廃止したみたいです(土曜外来をオープンしたときに在職していたので、そのニュースを聞いたときは何とも言えない気持ちになりました)。
ニュースで多く取り上げられているのは、医師の働き方改革です。
医師の働き方改革には
- 主治医制のあり方の変更(複数主治医制)
- 夜間や土日の、患者への病状説明の廃止
- 性別・年齢に依らないキャリア形成・働き方を支援
など様々な対策が必要となる。
これらの問題は、これから順次解決していかなければならないものではあるものの、今回は一歩先にシフト制が機能している看護師の病院経営に関する運用事例をご紹介します。
以下の内容は、一般社団法人Healthcare Opsが運営する病院経営運用事例集“Collective Healthcare Ops”から転載です。
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看護部:夜勤帯の仮眠導入(2時間の仮眠確保)
氏名:山本 幸
所属:白岡中央総合病院/看護部
要旨
- 前提:白岡中央総合 整形外科病棟 39床 看護師26名 看護補助者5名
- 課題:夜勤帯の仮眠導入(2時間の仮眠の確保)
- 対応:実態調査、仮眠の時間帯の設定、業務改善、スタッフの意識づけ
- 結果:平均1.5時間の仮眠の確保
前提
内部環境:
- 39床 整形外科 (一般病棟) 変形性膝関節症、大腿骨骨折等
- 看護基準7:1 看護師26名 看護助手5名 夜勤人数:看護師2名 看護助手1名
- 夜勤体制:2交代制 (17時~翌日9時)
外部環境:
- 24時間救急患者を受ける新久喜病院が近隣にある
課題
夜勤の仮眠導入 2時間の仮眠の確保
背景
- 導入前には夜勤での仮眠は0~2時間程度であった。
- 職員の夜勤へのモチベーションの強化、疲労回復を目的として、看護部全体での取り組みを行うこととなった。
- スタッフより(中途採用者)仮眠をとりたいとの要望があった
状況の分析
- 仮眠をとりたいタッフと、いらないと思っているスタッフがいる
- 夜勤帯の業務内容などにより(日により)仮眠の時間が確保できる場合とできない場合がある
- 時間の管理が苦手なスタッフもいる
アプローチ
- スタッフへ仮眠の意識付け(参考資料を基に仮眠の必要性を周知)
- 仮眠時間の設定
- 業務改善(オムツ交換、ラウンド時間などの時間の調整等)
- 他部署へのオムツサポートの時間の調整
- 仮眠場所の確保
- 仮眠時間の他に食事の取れる時間の調整(30~60分×2)
- 実態調査
結果
- 平均1.5時間の仮眠が確保できた
- スタッフからの疲労感が軽減したとの声があった
議論の残る部分
- 実際にスタッフからの仮眠導入後の感想、意見などを確認していない。
- OPEや入院が重なる時などに仮眠時間が確保できない夜勤帯もある。そういった場合にどのように仮眠をとっていくか看護部全体での対策も講じていく必要がある。
- 他部署からの視点ではもっと仮眠が取れるといいという意見があった。今回は2時間という目標で行ってきたが、16時間の連続勤務といったところから、もう少し仮眠の時間を確保できるようにしていくことも今後の課題である。
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おわりに
実際に、看護部の夜勤に仮眠を導入した事例、いかがでしたか?
すでに導入済みの病院にとっては当たり前の話かもしれませんが、今まで未導入だった病院にとってはゼロから運用を構築する話。
たかが仮眠、されど仮眠。多くのステークホルダーへの説明と、当事者(看護師)へのヒアリング・説明を経ての導入だったと思います。
この事例を参考に、多くの病院が働きやすい環境を提供し、より質の良い医療を患者さんに届けられるようになれば幸いです。
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