どの職種をとっても、人材不足が叫ばれる病院業界。
厚労省に対する解決策の提案を発信したり、人材不足をデータによって示したりするメディアを私は多く目にします。
しかし、実際に、各病院が目の前の人材不足に対してどのような対策を取るべきか発信している記事は多くありません。
そんな背景から、前回のブログでは、医師の採用施策についてご紹介しました。
今回は、医師以外の、看護師・コメディカルの採用についてお伝えします。
以下の内容は、一般社団法人Healthcare Opsが運営する病院経営運用事例集“Collective Healthcare Ops”から転載です。
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病院人事課:多職種採用の全容
氏名:南部ひろみ
所属:福井厚生病院 事務局 人事課
要旨
- 前提:福井厚生病院
- 課題:採用予定数の職員確保にむけて
- 対応:県内外の学校訪問を行い、学生へのアピールを強化
- 結果:平成30年度の新採用予定数は、介護職以外すべて確保 (ただし、国家試験の結果により3名不採用)
前提
- 内部環境:208床
- 外部環境:周囲に福井県立病院・福井済生会病院・福井赤十字病院がある。
課題
新年度における予定する全職種の採用者確保
背景
県内には、看護学部を持つ大学が3校、短大・専門学校が5校ある。学生が就職活動をする上で、大規模病院を希望する傾向がある。
コメディカルは、県内の学校で理学療法士・作業療法士・精神保健福祉士・社会福祉士は資格取得が可能であるが、薬剤師・診療放射線技師・臨床工学技師を目指す学生は、県外へと進学する。
どの職種も大病院への就職を希望する学生が多く、当院の魅力を伝えて当院に対し興味をもってもらい、「就職したい」と思ってもらえる広報活動が必要である。
状況の分析
まずは、県内外の学校に在籍する資格取得見込の学生について情報を収集、対象学生に対し、よりインパクトのある情報発信を行い認知度を高める。
- 募集対象となる学生は、どの学校に何人くらい在籍しているのか。
- 学生は、求人情報をどうやって収集しているのか
- 福井厚生病院は知られているのか。
- 「就職したい病院」として対象病院にリストアップされているのか。
- どのような視点で就職先を選ぶのか。
アプローチ
- 県外の学校のキャリアセンターと連絡をとり福井県出身者の在学数を調査
- 薬剤師・診療放射線技師・臨床工学技師(関西地区・近畿地区・北陸地区)
- 他職種合同の就職説明会を実施(年2回)
- 学校訪問を行い、説明会案内と学生への広報
- 郵送と電話による学内掲示の依頼
- ホームページによる告知とPCやスマホからのエントリー
- 学校が企画する企業説明会や仕事研究セミナーへの参加
- ハローワーク主催の就職フェアへの参加
- 県外大学内で、当院単独の病院説明会の開催を企画、依頼し実現(岐阜:参加者8名)
- 高校の進路指導の先生への職種についての説明を行い、学生への声かけを依頼
- 高校性対象(保護者同伴)の病院見学会の開催
結果
採用予定数対して介護職以外はすべて採用者を確保
- 看護師・薬剤師・診療放射技師・臨床工学技師・精神保健福祉士・社会福祉士・看護補助者・介護職
- (ただし、国家試験不合格者 薬剤師2名・臨床工学技師1名。平成31年度に採用継続)
議論の残る部分
福井厚生病院の良いところをさらにアピール方法がまだあるのではないか。
最近の学生は、保護者の意見に左右されるところが多い。保護者に対しもアピールが必要ではないか。
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実際の病院人事がおこなっている施策、いかがでしたか?
アプローチからわかった大事なポイントは、
- 各職種を輩出する学校といかに良い関係を築くか
だと感じました。
前回の投稿の中で、
- 施策を考える前に、戦略を準備しましょう
本事例を作成くださった福井厚生病院の人事課では、「人材を輩出する学校と良い関係を築く」戦略が前提にあったうえで、採用活動をしていることがわかります。
ここまで戦略がしっかりしていれば、毎年施策に変化を出しながら、より効率的な病院の良い部分のメッセージ訴求ができます。
人事に関わりのある方は、職種ごとに採用における戦略をしっかり練って、各職種に対して適切なアプローチを進めていきましょう!
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