病院経営/医療経営ブログ“Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)”

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Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

病院が取るべき採用施策

医師不足、看護師不足、コメディカル不足、経営人材不足。
どの職種をとっても、人材不足が叫ばれる病院業界。

一方、医療を取り巻くヘルスケアビジネスでは、求人サービスの調子がいいと聞きます。
思い浮かべるだけでも、

は、各社の経営を支える財源になっていると聞きます。

つまりこれは、プラットフォームビジネスとして転職支援を行う会社は、その手数料で非常に儲かっているという意味です。
ただ、プラットフォームが儲かっているからといって、日本全国の病院で採用活動がうまくいっているかというとそうではないと思います。

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医師不足の現状

医師だけに焦点を当ててみても、
日本は、OECD諸国の中で人口1000人あたりの臨床医の数が、下から4番目です。*1 f:id:massy535:20180805014449p:plain

また、医療圏ごとの人口10万人あたりの医師数を見ても、下の図のように、医師の偏在具合が見て取れます。*1 f:id:massy535:20180805014503p:plain (青色が医師が少なく、赤色が医師が多い地域)

もちろん、国として対策を打っていますが、直近の問題として経営を安定化するためにも各病院は医師を確保する必要があります。


2つの採用施策を紹介

医師不足の現状を打破する2つの採用施策を見つけたので、ご紹介します。 1つは、プロ野球好きをターゲットにした医師採用施策。もう1つは、石巻赤十字病院が展開する「急患帳」という研修医マニュアルの公開施策です。


プロ野球好きをターゲットにした医師採用

以下のホームページに掲載された画像を御覧ください。*2 f:id:massy535:20180805014543p:plain

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明らかに、野球好きの医師を狙った採用戦略。実際のページには、明確な病院名の記載がありませんでしたが、名古屋ドームから48分の病院とあるので、知っている方はすぐにわかるのではないでしょうか。

総合病院というと、夜勤・当直が忙しく、オンコールもあって、ハードな面が気にかかります。 ただ、人材不足の業界なので、プロ野球好き訴求といった 福利厚生やプライベートのサポート を全面的に訴求するのはとても効果的と思われます。

このプロ野球好き訴求を見た際に感じたのは、首都圏に存在する「県人会」や医師を多く排出する進学校のOB/OG会にアプローチすると、成功の確率がさらにあがりそうということです。


研修医マニュアルの公開施策

野球球団好きをターゲットにした“おもしろ”施策と打って変わって、真面目な施策として取り上げるのは、石巻赤十字病院が研修医マニュアルとして公開している「急患帳」。 f:id:massy535:20180805014619p:plain

ホームページに以下のように説明がしてあります。*3

この研修医マニュアルは、救急患者への対応を学ぶために実施している「研修医セミナー」の内容をまとめた患者対応の虎の巻で、“九官鳥のようにまねることから始まる”という意味で『急患帳』と命名。救命救急センター長を編集責任者として、研修医たちも加筆して作成しました。

マニュアル公開という、業界に対して“give”する活動は、かならず“take”した人の頭の片隅に残っているものです。
業界に対して、積極的に役に立つ情報を発信 していくことで、情報感度の高い人から注目を浴び、転職する際の検討リストの中に載る こともあるでしょう。また使い回せる情報だからこそ、自然と先輩が後輩に紹介することで石巻赤十字の名前が自然に広まります。口コミを通しても病院のブランディングができるという意味で、とても良い施策です。

ただ、ある程度人材が豊富な病院でないと、そもそも“give”するリソースが取りにくいというデメリットもあります。しかし、中長期でかならず効果が出てくるものなので、堅実なアプローチを求めるのであれば、おすすめです。


施策の前に考えるべきこと

実は、福利厚生やプライベートのサポートに重点を当てたものや役立つ情報を発信する人事採用施策をおこなう前に、おこなうべきことがあります。

それは、人事の採用戦略 を決めることです。

下の図は、ソフトバンクが掲げている概念です。*4

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理念のもとに、達成したいビジョンがあり、それを叶えるための戦略であり、細かい部分での戦術・計画があるのが理想だと表しています。
私が言いたいのは、上記で上げた採用施策は、ソフトバンクが掲げる概念の「戦術・計画」に当たる部分です。

採用を行う際に、考えるステップとしては、

  1. 病院の理念に基づいて、どういう人材を獲得すべきか明確にする(採用のビジョン)
  2. 採用のビジョンに沿って、組織に適した人材をどう獲得するかを決める(採用の戦略)
  3. 戦略に沿って、長期の施策と短期の施策を考える
    1. 長期:各職種からの定期的な情報発信
    2. 短期:おもしろ企画の実施

がセオリーです。
1・2を一度決めてしまえば、5年ほどは微修正を繰り返しながらも大きな変更をする必要はないです。
そうすれば、前段で紹介した人事施策の検討が可能になってきます。


まとめ

人材不足が叫ばれる病院業界。今回は、そんな中、目を引く採用施策を2つ紹介しました。

  1. プロ野球好きをターゲットにした医師採用施策
  2. 石巻赤十字病院が展開する「急患帳」という研修医マニュアルの公開施策

ただ、2つの施策を真似ても採用はうまくいかず、その上流概念である、ビジョンと戦略を明確にする必要があります。
ビジョンと戦略がはっきりしていれば、思い切った施策をすることが可能になります。そうすれば今回紹介した施策を参考に、それぞれの人事課や職種が手を組んで、面白い採用企画が生まれるかもしれません。
人事に関わりのある方は、ぜひ自病院の採用におけるビジョン・戦略・施策をしっかり固めて、病院業界を面白くしていきましょう!

参照

  1. https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000184302.pdf
  2. http://dr-dragon.net/
  3. http://www.ishinomaki.jrc.or.jp/recruit/juniorresident/kyukancho/
  4. https://www.softbank.jp/corp/about/philosophy/vision/next30/



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