Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

ヘルスケア界隈で気になっていることを調べてみました。今後の医療の方向をわかりやすく示すブログメディアを目指しています。

Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

テクノロジーが、医療を救う

近視眼すぎる、日本の医療×テクノロジー

こんにちは、一般社団法人Healthcare Ops の小迫です。

先日、日経デジタルヘルスの、こんなタイトルの記事を目にしました。(元記事は、日経メディカルOnlineのようです)

「テクノロジー」じゃ医療は救えません tech.nikkeibp.co.jp

主旨を引用しながらまとめてみると。。。

医療を救うかもしれないのは、そのテクノロジーそのものではなく、アイデアだからだ。

大切なのは、テクノロジーをどうやって医療現場で使うかを考えること以上に、まずは医療現場の大きな課題を解決する道筋を考え、その中でテクノロジーが生きるポイントがあれば導入することだ。

医療現場のニーズと流れを押さえないままに参入しても、うまくいかないことが往々にして起こる。

言わんとすることは、わかります。既存の医療現場のシステムやソフトウェアは、現在私たちが体験しているスマートフォン的な「使いやすさ」とは程遠いです。
しかし、大切なのはアイデアなのでしょうか?テクノロジーは医療を救えないのでしょうか?現場の「目の前の」課題を解決することだけが正しいのでしょうか?

この日経の記事から感じたのは、日本の状況しか見ておらず、さらにいうとベンチャー界隈や日系企業の医療への参入に限定しすぎているということです。
さらに、記事において、解決したい課題の目の前のものに焦点があたり、R&D(研究開発)の視点が欠けています。
記事自体が、「医療4.0」のPRも含んでいるため、内容に引っ張られている部分もあるとは思います。

ただ、「日経」の看板を背負った記事で、「近視眼的な医療の展望」と「ニーズを掴んだサービス開発」を提案することに、疑問を持たざるを得ませんでした。
ましてや、「テクノロジー」じゃ医療は救えません というタイトルが、わたしには残念でなりません。

なぜそう思ったかを改めて、まとめてみました。


昔から医療はテクノロジーで、進化してきた

テクノロジーの本質は、今までおこなっていた行為を技術によって無くす ことです。
白物家電の例でいうと

  • 洗濯機の登場により、手洗いの必要がほとんどなくなりました
  • 炊飯器の登場により、釜で火加減を調整しながら米を炊く必要がなくなりました。

医療の世界でも、考えるだけでも多くのテクノロジーによって、患者へより良い治療がもたらされています。
医療機器だけをピックアップしても、

  • CT/MRI
  • 超音波検査
  • 内視鏡
  • ラパロ/ダヴィンチ

挙げればキリがないが、テクノロジーによって、医療は確実に進化してきました。これらの機器によって、検査の工程や手術の工程を大幅に削減してきました。


増え続ける業務量

医療機器周りのテクノロジーが進化したことで、周辺の業務は増加してしまいました。臨床検査周りの数値の確認、電子カルテでのオーダー、患者情報の細やかな記録を考えると、医療機関に従事する職員の方々(医療職、非医療職ともに)の業務量は右肩上がりです。
さらに、当然のように患者安全を求められ、できるだけ多くの患者を診て、外来と入院をこなす日々です。
テクノロジーが、病院で働く人々に負担をかけているのも事実です。

先ほどの述べたように、テクノロジーの本質は、今までおこなっていた行為を技術によって無くす ことです。
ビッグデータやAI、クラウドの登場によって、やっと、我々は膨大な業務から解放される時代が来ると私は信じています。
それを裏付ける世界のテクノロジーの動向を見てみましょう。


テックジャイアン(Tech Giants)が進める医療

世界の医療は、テクノロジーを中心に発展してきたテックジャイアン(Tech Giants)を中心に進化しようとしています。 メジャーなところをピックアップするだけでも、IBM、GE、Microsoft、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)があります。
それぞれ、一例ずつ紹介します。

まずは、IBM。

IBMの有名なAI、IBM Watson。その中の「Watson Patient Safety (WPS)」を使えば、高度化する医療の中で投薬される薬において、副作用の中の中毒性を判断して、患者の安全性の担保までの時間を劇的に短くする ことができます。*3

実際、私の新卒で、患者安全の部署に所属していました。毎日あがってくるインシデントレポートを、エクセルに打ち直して、専門の人に分析してもらう業務でした。
すべてを HTML化して、クラウドに溜めれば、「この部署のこういう業務が、今後危ないよ!」みたいなアラートも可能になる未来を感じています。

GE

GEは、あのエジソンが作った会社として有名です。昔は家電やファイナンスで有名でしたが、いまはエネルギーと医療の会社です。 医療の分野は、GEヘルスケアが担当しています。GEヘルスケアは、「Applied Intelligence- 医療データ分析サービス」 を提供しています。データの収集とデータ活用を、現場の業務改善や経営課題の解決に役立てようとするサービスです。

m.youtube.com

実際の事例として、放射線科の効率化があります。

放射線科のオペレーションの様々な情報を集約し、複合的にクロス分析をして知りたいことを可視化してくれるApplied Intelligenceを使い始めて、まず感じたメリットは何時間もかかっていたデータ収集や解析が瞬時に済むことだと言います。

Microsoft はいかに?

IT界の巨人Microsoft。新社長サティア・ナデラ就任以降、提携や買収をうまく展開し、復活を遂げたと言われています。
そんなMicrosoftが提供するが、Skypeによる遠隔医療です。*4

Skypeにアドオンして、Web会議機能による診察だけでなく、診療予約も同ツール上から可能という。「ボット機能を実装しており、診療予約の際に患者は(ツールに)話しかけるだけで、遠隔診療の診察スケジュールを確定できる」

GAFAで注目すべきは、2つのA

世界でもっとも注目すべきIT企業をGAFAと呼びます。これは4つの企業である、Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字を取ったものです。
この4つの企業のうち、AppleとAmazonの医療への貢献に注目します。

Appleは、iOSを搭載した iPhone, iPad自体が、医療への貢献となっています。使いやすさ、強靭なセキュリティ、アプリの更新のしやすさが強みです。 下の写真にあるように、看護師にiPhoneを配布することで、患者情報の確認、メッセージの送受信、アラートの管理などを一か所で行えるようにしています。*5

iOSを中心とした業務ツールが、これからの医療の業務を変えていくことは間違いないでしょう。

Amazonについては、先日記事にした、Pillpackの買収が大きいです。オンライン薬局の買収とAmazonの配送を組み合わせると、新しい患者体験が生まれることでしょう。 compass.healthcare-ops.org

テックジャイアンとの動きをまとめると

上記で紹介した事例をまとめます。

  • IBM: Watsonを使った、ビッグデータ解析による検知機能
  • GE:MRIの導入に伴う、データ収集/分析環境の提供
  • Microsoft:Skypeをつかった遠隔医療の実現
  • Apple:iOS上での、柔軟で使いやすい豊富な種類の、アプリの提供
  • Amazon:配送システムを利用した薬の提供


改めて、テクノロジーが医療を救うのか?

私は、この10年で、医療業界は大きく変革すると思っています。
それは、先に挙げた海外のテックジャイアンによるテクノロジーの導入によって起こるものだと信じています。 そして、医療界の中でも病院の中で、人が 今までおこなっていた行為は、技術によって無くなる でしょう。
それが、業務量の減少と業務の効率化につながります。そうすれば、本来時間を割くべき業務であったり、患者との対話だったり、自己研鑽や家族の時間 を増やすことができます。


最後に

わざわざ、日経の記事に対する批評をポストする必要はなかったかもしれません。
ただ、世界はすごいスピードで動いています。
もちろん、ベンチャー企業が盛んに医療業界に参入して、今までない取り組みも行うでしょうが、アメリカの大きな会社は膨大な資金力で、日々研究開発をおこなっています。

私個人としては、テクノロジーについては、大きな企業の取り組みにいかに乗っかるかが鍵だと思っています。そのテクノロジーによって、人が行う必要のない仕事は、どんどん機械化していくべきです。
逆に、資金力がないがアイデアがあるベンチャーは、患者満足や職員満足に焦点を当てたサービスを展開するが重要だと感じています。そのサービスがうまくいって、資金がたまれば、テックジャイアン同様、R&Dで医療に貢献すればよいと考えます。

テクノロジーが、医療を変える時代がすぐそこまで来ています。それは結果として、働き手を楽にして、医療を「救う」ことになるでしょう。
そして、これからの医療経営では、大手IT企業(いわゆるテックジャイアン)といかに上手く取り組むかが重要になります。

今回は、日経デジタルヘルスの記事から湧いた疑問や違和感を、世界の状況を交えながらまとめてみました。気になる記事があれば、そこから考えたことを今後も文章にしていきます。


参照

  1. https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/327413/070300056/?ST=health
  2. https://medicalnote.jp/contents/170912-001-RL
  3. https://healthtechplus.medpeer.co.jp/people/409
  4. https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/event/15/091500142/102900053/?ST=health&P=3
  5. https://www.apple.com/jp/healthcare/products-platform/
  6. https://compass.healthcare-ops.org/entry/2018/07/02/232900



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