いつも医療経営/病院経営ブログメディア"Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)”を読んでいただき、ありがとうございます。
小迫です。
以前、以下のような投稿をしました。
その中でマーケット・インの説明をしました。
企業が商品開発・生産・販売活動を行ううえで、顧客や購買者の要望・要求・ニーズを理解して、ユーザーが求めているものを求めている数量だけ提供していこうという経営姿勢のこと。“売れるものだけを作って提供する方法”といえる。
マーケットとは、日本語でいうと「市場」という意味です。
医療圏の中で医療サービスを提供する各医療機関は、どのように市場を捉えるのが良いのでしょうか?そして、市場をどのように分析すればよいのでしょうか?
そもそもマーケット・インで医療を考えるにしても、マーケット(市場)がどのくらいの大きさかを知る必要があります。
今回は、医療における市場分析について考えてみました。
市場分析とは?
市場分析は、マーケティングの考えの一部です。医療において、マーケティングという言葉が語られることが少ないですが、著名経営コンサルタントの大前研一が、マーケティングにおける市場分析をこう言い換えています。
「製品・市場戦略」
その製品の持つ最大限の市場ポテンシャルを吸いつくすよう努力するのが事業家の目的であろうし、(中略)己れの益のために(商道徳はわきまえつつ)適用するための製品を提供することが事業(ビジネス)というものであろう。
大前研一の引用を、そのまま医療サービスの提供に当てはめることが難しいですが、参考にできる考えでもあります。
市場シェアは、企業の経営指標で最も重要なモノと言われています。
その理由として、以下の3つを把握して、
- 市場規模の把握
- 自病院の状況の把握
- 競合(他病院)の状況の把握
3つの数値から得られる結果が、自病院の市場シェアです。
つまり、市場シェアは自病院の努力の結果を表している数値であるから、最重要の指標と言われています。
市場シェアの定義
病院で働く上で、自分の関係する病院のシェアの数値を頭に入れておくことは重要です。
病院におけるシェアは、
その病院の患者数÷同一医療圏内の病院の患者数合計
で定義されます。(患者数から見えてくること - 病院情報局)
実際、自分の病院の各診療科が同じ医療圏でどのくらいの割合を占めているのかを知っておくことで、自病院の強み弱みを把握することもできます。
病院の医療圏シェア分析の方法
6月の頭に、Healthcare Opsの研修事業として福井県に行きました。
せっかくなので、今回は福井県の病院をピックアップして、市場分析をしてみます。
データは、病院情報局の平成28年のデータを使います。
今回は便宜的に、「福井県済生会病院」の視点で市場分析をしていきます。(参照:福井県済生会病院 - 病院情報局)
1. まずは、各診療科の、医療圏全体の患者数を出します。
2. 医療圏全体の患者数を降順に並べます。
3.「2」で並び替えた診療科の順番で、福井県済生会病院の医療シェアを並べます。
ここからわかるのは、
- 耳鼻咽喉系、新生児系、皮膚系、乳房系は、患者の規模の小さいわり、約20%以上のシェアを獲得できている。
- しかし、他の病院よりシェアが取れているかは不明である。
そこで、同じ福井市にある、「福井県立病院」と「福井赤十字病院」の医療シェアをみてみます。
4. 同じ医療圏にある病院なので、各診療科の医療圏全体の患者数は同じです。
5. 各診療科の医療圏全体の患者数を降順に並べます。
6. その状態で、医療圏シェアを比較します。
うーん。。。わかりにくい。
7. 「(それぞれのシェア)ー(福井県済生会病院の医療シェア)」をして、再度グラフ化
ここからわかるのは、(前提:済生会病院は精神科を持っていないので、省略)
- 赤い部分:耳鼻咽喉系、新生児系、皮膚系、乳房系は、県立病院や赤十字病院と比較しても、同等もしくはそれ以上のシェアを獲得している。
- 青い部分:呼吸器系、腎・尿路系、外傷系については、医療圏の患者数が多いわりに、両病院にシェアが負けている状態。
- 青い部分:病院内のリソース(ベッド、医師、看護師、医療機器など)を考慮しつつ、呼吸器系、腎・尿路系、外傷系については、シェアを伸ばせる余地がありそう。
と考えることができるでしょう。
まとめ
医療サービスを提供するうえで
- マーケット(市場)がどのくらいの大きさかを知る必要があります。
- 市場シェアは、企業の経営指標で最も重要なモノです。
- シェアは、その病院の患者数÷同一医療圏内の病院の患者数合計 で定義されます。
- 公開されているデータをもとに、簡単に各診療科のシェアを算出できます。
自分が働いている各診療科の市場シェアを把握して、自病院の強み弱みを知りましょう。その情報を病院の経営企画、医療連携、人材獲得に役立ていただけると嬉しいです。
紹介した本
参照
- http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0502/04/news119.html
- http://hospia.jp/wp/archives/1146/
- http://www.healthcare-ops.org/posts/4306230
- https://hospia.jp/