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診療報酬改定を読む⑩:がんゲノム中核拠点病院の評価

こんにちは、編集部Mです。

4月1日付で診療報酬制度が2018年度版へ移行し、各医療機関では様々な対応を必要としています。既に運用として始まっていることも多いと思います。このブログでも2018年度改定で気になる項目を取り上げて解説していきます。

第10回のテーマは、「がんゲノム中核拠点病院の評価」です。

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がんゲノム医療とは?

がんゲノム医療とは、「がん患者の遺伝子情報(ゲノム)を調べて、最適な治療薬の選択などに役立てる医療」のことです。

日本の保険医療制度におけるがん治療では、臓器ごとに使用できる抗がん剤が決まっています。例えば、肺がん治療に使える薬は○○と××、大腸がんの治療に使える薬は△△、といった具合です。

そのため、例えば肺がん治療に対して大腸がんの薬を使用するなどのいわゆる「薬剤の適用外使用」は現在の健康保険制度では認められておらず、自由診療という扱いになります。(※レセプト提出の際の症状詳記などで認められる適用外使用もケースとしてはあるようですが、原則論としてはすべて自由診療です。)

同じがんであっても、薬の効果や副作用の出方には個人差があるということが最近の研究で分かってきています。がんゲノム医療では、患者のがん組織などを遺伝子解読装置で読み解き、がん細胞の遺伝子の異常を調べ、その異常に合った抗がん剤などを選択できます。これにより、がん細胞のみをピンポイントで攻撃するため、従来の抗がん剤より効果が高く、副作用も少ないとされています。

参考記事:2018/4/29 日経新聞

www.nikkei.com

がんゲノム医療は、厚労省の定めた「第3期がん対策推進基本計画」のがん医療の柱の一つに位置づけられています。今後、国を挙げてがんゲノム医療を提供していくにあたり、各病院で標準化したを治療を提供するための仕組みとして「がんゲノム中核拠点病院」が新たに設置されました。

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がんゲノム中核拠点病院とは?

がんゲノム医療の提供体制

全国どこにいてもがんゲノム医療を受けられる体制を構築するため、がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関として、全国11カ所のがんゲノム医療中核拠点病院が新たに指定されました。

加えて、各中核拠点に検査を依頼して、一緒にゲノム医療に取り組む連携病院が各地域に計100か所存在し、がんゲノム医療がスタート体制になっています。(中核病院と連携病院の役割分担については下図参照)

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※がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療連携病院の一覧表:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000199651.pdf 

 

がんゲノム医療の実施に必要な要件

がんゲノム医療には非常に高度な医療技術や、充実した医療機関の体制が求められます。がんゲノム医療の実施に必要な要件として、下記の8つが挙げられています。

  1. パネル検査を実施できる体制があること。(外部機関との委託を含む)
  2. パネル検査結果の医学的解釈可能な専門家集団を有していること。(一部の診療領域について他機関との連携により対応することを含む)
  3. 遺伝性腫瘍等の患者に対して専門的な遺伝カウンセリングが可能であること。
  4. パネル検査等の対象者について一定数以上の症例を有していること。
  5. パネル検査結果や臨床情報等について、セキュリティが担保された適切な方法で収集・管理することができ、必要な情報については「がんゲノム情報管理センター」に登録すること。
  6. 手術検体等生体試料を新鮮凍結保存可能な体制を有していること。
  7. 先進医療、医師主導治験、国際共同治験も含めた臨床試験・治験等の実施について適切な体制を備えており、一定の実績を有していること。
  8. 医療情報の利活用や治験情報の提供等について患者等にとって分かりやすくアクセスしやすい窓口を有していること。

 

診療報酬への反映:がんゲノム医療中核拠点病院の評価

ここからは診療報酬上でどのような評価がなされるのかをまとめていきます。

とはいっても、2018年度の改定からがんゲノム医療が国の制度としてキックオフしたばかりですので、診療報酬上では大幅な変更は起きていません。まずはがんゲノム中核拠点病院に指定された医療機関に対し、がん拠点病院加算の算定要件の見直しが行われる、といった内容になっています。

算定点数:250点(入院初日)

施設基準を満たす保険医療機関であって、ゲノム情報を用いたがん医療を提供する保険医療機関に入院している患者について、がん拠点病院加算の所定点数に250点が加算されます。

施設基準

がんゲノム医療中核拠点病院として指定された病院であることがそのまま施設基準になります。

 

がんゲノム医療の現状と課題

遺伝子パネル検査の普及

「遺伝子パネル」とは、がんの診療上重要な複数の遺伝子の変異、増幅や融合を同時に解析できる診断薬のことを指します。これまでは自由診療の範囲で実施されていたパネル検査が、今後は先進医療としてスタートしていきます。一方で、一回当たりの費用が非常に高額なパネル検査が、国民皆保険制度の財政状況を鑑みてどこまで公的医療保険の適用となるか未知数なところが大きく、遺伝子パネル検査に基づくがん診療が国民全体に普及するにはまだまだ時間がかかると言えます。

遺伝情報の管理

遺伝子パネル検査により、患者から集まる遺伝情報は当然膨大になっていきますが、遺伝情報の管理や活用の方法などが各病院内で確立していません。「遺伝情報」という非常に難しい個人情報を病院がどう扱うか、またそれを患者にどう使えるかをいち早く確立することが必要となります。

 

まとめ

  • がんゲノム医療とは、「がん患者の遺伝子情報(ゲノム)を調べて、最適な治療薬の選択などに役立てる医療」のこと。
  • がんゲノム医療を受けられる体制を構築するため、がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関として、全国に11のがんゲノム医療中核拠点病院が指定された。
  • 各中核拠点に検査を依頼して、一緒にゲノム医療に取り組む連携病院が各地域に計100か所存在し、がんゲノム医療がスタートする。
  • 2018年度の診療報酬より、がんゲノム中核拠点病院に指定された医療機関に対して、がん拠点病院加算の算定要件の見直しが行われた。

 

参考

 

さいごに…

2月中旬より約3か月にわたりお届けしてきたこの「診療報酬改定を読む」シリーズ、本記事でちょうど10本目になりますので、本記事をもって一旦終了とさせていただきます。

病院での診療報酬に携わっている方のお役に少しでも立てていれば、大変嬉しく思います。

診療報酬に関する記事は、またテーマを決めて書いていければと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします!

 

診療報酬改定を読むシリーズを読み返したい人はこちら

 

 

 

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