こんにちは、一般社団法人Helathcare Ops代表の小迫です。
今日は、私が長年悩んできた「仕事のスキルと給料」の話を書いていきます。
ほかの業界の友人のほうが、自分より仕事ができる・・・?
私は新卒で、総合病院の経営職に就職しました。経営職というより、新卒の立場だったので事務総合職という言い方が誤解を招かない言い方だと思います。
職場にはとても恵まれていました。上司や担当のプロジェクトマネジャーは、アメリカ帰りの修士号と持った人でした。一緒に働く医療職の方も修士号持ちの方が多かったです。そのおかげで、論理的な話がベースのうえで、患者にとって最適な医療サービスをどう提供するかを議論して仕事を進めることができました。
仕事のやり方にもやっている内容にも、自信を持っていました。
しかし、どうしても頭から拭えない疑問がありました。
「大学時代の友人より、給料が低い。もしかすると、友人たちはすごい給料をもらっているから、自分よりすごく仕事ができるのではないか?」
いま考えるとちっぽけなことで悩んでましたが、当時の私は真剣でした。
給料のおおまかな額は、仕事ができるかどうかでは決まらない
総合病院からIT業界に転職したあと気づいたのですが、給料のだいたいの額と仕事ができる否かは、あまり関係がありませんでした。
東洋経済オンラインが発表している「最新版!「月額給料が高い業界」ランキング」を見ても明らかです*1。
当たり前なのですが、利益率の高い業界のほうが、人件費にお金をかけることができるので、自然と給料が高くなります。日々の努力以前に、業界構造が給料に影響していることを知りました。
つまり、大学の友人の給料の額と自分の仕事の出来不出来は、関係がないということです。
でも、社内のあの人よりは仕事しているから、もっともらってもいいはず
では、社内(医療機関内)の話に移りましょう。
業界で給料が違うことはわかったが、社内ではもっと貰えてる人がいる。自分は「あの人」より仕事をしているから、もっと貰ってもいいはず!と思う方もいると思います。
給料の構成を示した厚生労働省の調査があります*2。
1.年齢・勤続給 : 6.8%
2.職務・能力給 : 37.9%
3.業績・成果給 : 7.1%
4.総合判断 : 39.1%
じつは、業績・成果は、給料の7.1%しか考慮されておらず、職務・能力給が大きく作用していることがわかります。
職務・能力給なら、仕事とスキルと比例するかと思いきや、ここで言われているのは、社会人として仕事がうまく進められる能力(経験を通じてうまくやっていく能力)のことです。
職務・能力給は、職能給といわれ、
職務や役職に関わらず、勤続年数を重ねることで、高い処遇や手当を受けることができます。*3
つまり、年功序列をベースにした給与体系です。
職能給と対立する概念として、職務給という給与体系があります。こちらは、仕事の内容/難易度によって給与が決まります。紛らわしいですが、「職」務・「能」力給を頭を取って職能給。これと職務給は明確に違います。
例えば、財務のスキルを持っていたAさんがいたとします。人事異動で、財務経理部から購買部に異動になったとします。職能給の場合、Aさんの仕事人としての能力を評価しているので給料は据え置きになる可能性が高いです。一方、職務給の場合、新しい業務におけるアウトプットが低下することが予想されるため、給料が下がる場合があります。
日本の企業では職能給をベースに人事制度が整えられているため、一社に長く勤めることのメリットが大きいです。さらに給料が下がる恐れがないため、大胆な人事異動も可能になります。一方、海外は職務給がほとんどです。スキルを評価して人材を獲得するため、就職後の人事異動は起こりにくいです。そのため、ひとつのスキルを身につけて、給料とポジションを求めて転職することが前提となります。
日本で働く上では、仕事のスキルアップは必要ないか? 仕事ができることは意味がないか?
職能給がベースになっていると、勤続年数が長く年齢が上の方が給料は高くなります。しかし、だからといって、仕事のスキルアップを怠ったり、仕事に手を抜いて言い訳ではありません。仕事はできるに越したことはないですし、スキルアップは常にするべきです。
スキルを手にして仕事ができれば、以下のようなチャンスが生まれます。
- スキルを通じて、利益構造の違う業界に転職できる
- 同じ業界で、より良いポジション(職位職責)のオファーをもらえる
- 社内での評判がよくなり、職能給と別軸の総合判断の要素で、役職があがる
仕事ができて、仕事のスキルをもっていることに悪いことはありません。ただ、私がこの記事を通して伝えたいのは、このようなことです。
給料は、業界や制度が前提に決まっています。仕事ができるからといって、すぐに給料があがるわけではなく、社内の制度を理解しないといけません。さらに、他業界の人と比較しても、「給料=仕事のでき」という訳ではありません。これを知ってるか否かで、精神的な余裕が違ってくると思っています。
最後に
医療機関での仕事は、命がそばにある意義のあるものです。だからといって、他業界の仕事と比べて給与が高くあるべき、ということになりません。仕事の内容に優劣があるわけではありません。また、給料が仕事の価値を決める訳ではありません。仕事は仕事ですし、給料は企業の利益構造によって決まります。
また、仕事は生活のすべてではありません。家族、友人、自分自身があっての仕事です。割り切ることも含めて自分自身で納得し、自分の仕事に誇りをもって、仕事に取り組みましょう。
そうは言いつつ、医療に関わる仕事には大きな意義とやりがいがあると私は感じています。だからこそ、ブログメディアで考え方や情報を発信しています。この記事を通して、少しでも医療に関わる方のモヤモヤを解消できると嬉しいです。
参照
- https://toyokeizai.net/articles/-/190638?page=3
- http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130422/247019/?P=5&mds
- https://bizhint.jp/keyword/63549