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診療報酬改定を読む②:働き方改革に対応する診療報酬

こんにちは、編集部Mです。

2018年度の診療報酬改定の概要が決定し、毎日様々なニュースが出てきています。

このブログでも、2018年度改定で気になる項目を取り上げて解説していきたいと思います。第2回のテーマは、「働き方改革への対応」です。

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病院にも押し寄せる働き方改革の波

2016年9月に、安倍晋三首相は内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置し、働き方改革の取り組みを提唱しました。それと前後して、労働基準監督署の監査が有名企業に立て続けに入ったことも連日報道されました。

その監査の対象には、24時間365日の稼働が社会的に求められる病院も含まれ、数々の有名な病院が厳重な是正勧告と指導を受けたことも話題になりました。

 

病院における「働き方改革」の難しさ

病院には、

  • 正当な理由がない限り患者を拒むことのできない応召義務の存在
  • 夜間・休日問わず常に同じ水準の医療が求められること

などの要素があることから、一般企業と比較しても働き方を変えにくい部分があるのは事実です。

もう一つ、制度的に働き方が縛られている部分が病院にはあります。

それは、「診療報酬の算定と職員の勤務が密接にかかわっていること」です。特定の職種・スキルを持った職員がいることで患者さんの安全が守られる、という考え方はもっともなのですが、一方で特定の職員に負担を強いる原因にもなっています。

今回は、このような職員の勤務に関わる要件が2018年度の改定でどのように変わったのかをご紹介します。

 

「働き方改革に対応する診療報酬」の紹介

今回の改定で様々な項目が変化していますが、その中から3つ取り上げます。なお、改定の詳細を知りたい場合は、 第389回中医協資料の総‐1に記載されている「個別改定項目について」も併せてご参照ください。

  1. 医療従事者の勤務環境改善の取組の推進:総合入院体制加算の変化
  2. 医師等の従事者の常勤配置に関する要件の緩和 
  3. 救命救急入院料等における医師の勤務場所に関する要件の緩和

 

 

1.医療従事者の勤務環境改善の取組の推進:総合入院体制加算の変化

中医協資料の概要

総合入院体制加算とは、急性期医療を24 時間提供できる体制や、病院勤務医の負担の軽減・処遇の改善をしているかを評価した加算です。(14日を限度として算定であり、1日当たりの点数は加算1は240点、加算2は180点、加算3は120点)

この趣旨に対し、今回の改定では

総合入院体制加算の要件となっている病院勤務医の負担軽減等の体制について、対象を病院に勤務する医療従事者全体に拡大し、取組内容を整理する。  

と記載されています。(第389回中医協資料 総‐1 P409より)

今までの要件は?

病院勤務医の負担の軽減・処遇の改善計画を立てるにあたり、下記の項目を含めることが求められていました。

  1. 医師事務作業補助者の配置
  2. 短時間正規雇用医師の活用
  3. 地域の他の保険医療機関との連携体制
  4. 交代勤務制の導入
  5. 外来縮小の取組み(ただし、特定機能病院及び一般病床の届出病床数が500床以上の病院では、必ず本項目を計画に含むこと。)
  6. 予定手術前日の当直や夜勤に対する配慮等

今回の改定で何が変わる?

改善計画に、次に掲げる項目のうち少なくとも2項目以上を含んでいること、という要件に変更となりました。

  1. 外来診療時間の短縮、地域の他の保険医療機関との連携などの外来縮小の取組み(許可病床の数が 400床以上の病院では、必ず本項目を計画に含むこと。)
  2. 院内保育所の設置(夜間帯の保育や病児保育の実施が含まれることが望ましい)
  3. 医師事務作業補助者の配置による病院勤務医の事務作業の負担軽減
  4. 病院勤務医の時間外・休日・深夜の対応についての負担軽減及び処遇改善
  5. 看護補助者の配置による看護職員の負担軽減

太字で記載した部分は、勤務医以外にも影響がある分野です。2 の部分については昨今の保育所事情を踏まえた政策的な内容を感じさせますが、病院には女性職員が多いため、きちんと機能すれば有効な働き方改革となりそうです。

 

2.医師等の従事者の常勤配置に関する要件の緩和 

中医協資料の概要

具体的な考え方として

「医師については、小児科・産婦人科・その他専門性の高い特定の領域や夜間の緊急対応の必要性が低い項目について、週3日以上かつ週 24時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算でも配置可能とする。

 という内容が追加されています。(第389回中医協資料 総‐1 P418より)

今までの要件は?

例えば小児科の新生児治療回復室入院医療管理料には、「専任の小児科の常勤医師が常時1名以上配置されていること」という要件が算定をする上での基準に盛り込まれています。

今回の改定で何が変わる?

この「常勤要件」が緩和されたことで、一定の勤務水準を満たした医師であれば、非常勤であっても新生児治療回復室を管理するスタッフとして従事することが可能になります。いままで常勤医師に負担がかかっていた要件が、昨今の勤務実情に合わせて緩和された改定内容と捉えることができると思います。

 

3.救命救急入院料等における医師の勤務場所に関する要件の緩和

中医協資料の概要

具体的な考え方として

患者の治療室への入退室などに際して、一定の条件の下では、継続的な診療を行うために医師が一時的に治療室から離れても差し支えないこととする。

という内容が追加されています。(第389回中医協資料 総‐1 P423より)

今までの要件は?

救命救急入院料(救命のICUで算定される入院料)を例にとると、これまでの施設基準には、

専任の医師が、午前0時より午後12時までの間常に(以下「常時」という)救命救急治療室内に勤務しているとともに、手術に必要な麻酔科医等が緊急時に速やかに対応できる体制がとられている。

 と記載がなされています。

特に夜間や休日などの人が少ない勤務帯で、この「常時」という要件をどこまで厳密に守れるのか、というのは各病院の悩みの種であると思われます。特に勤務実態を厳しくみられる昨今では、このような算定要件を守ることと、勤務環境を改善することのバランスが非常に難しくなってきています。

今回の改定で何が変わる?

基本的な施設基準は変わっていませんが、「ただし」から始まる文章で次のような内容が追記されています。

患者の治療室への入退室などに際して、看護師と連携をとって治療室内の患者の治療に支障がない体制を確保している場合は、一時的に離れても差し支えない。
※ 特定集中治療室管理料、小児特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料1及び総合周産期特定集中治療室管理料についても同様

集中治療室の体制を考える上で重要なのは、「医師を常時勤務させること」ではなく、「治療室内の患者の治療に支障がない体制を確保すること」というメッセージが強くなっています。

もっとも、この「一時的に」という文章が何とも解釈が難しい、玉虫色の部分ではあるのですが…。

 

まとめ

今回は代表的なところをご紹介しましたが、この他にも勤務環境の改善を目的とし、チーム医療等の推進による業務の共同化、移管を活性化させる項目として下記の内容が取り上げられています。

  • 常勤の薬剤師に係る週当たりの勤務時間の特例 (P422)
  • ICTを活用した勤務場所に関する規定の緩和 (P425)
  • 看護職員と看護補助者との業務分担・共同の推進 (P428)

人を仕事に貼り付けるのではなく、職種の壁を超えてチームで患者さんを継続的に見れる環境を作っていきましょう、というメッセージが見える改定内容となっており、今後の病院の対応に注目が集まりそうです。

参照

 

 

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