嬉しいニュースがTwitterから届きました。
閉鎖が決定していたうつ病の方向けの認知行動療法コミュニティ「U2plus」ですが、利用者さんの強いご希望を受け、LITALICOさんより弊社が譲受して、運営を続けることになりました。すでに愛されているサービスですが、さらにいいサービスにしていきます!応援してください! https://t.co/JJGIHsYMku
— 櫻本真理 | cotree (@marisakura) 2018年1月26日
オンラインカウンセリングサービスを提供する株式会社cotreeがオンライン認知行動療法サービス「U2plus」事業の譲受
オンラインカウンセリングサービスを提供する株式会社cotree(コトリー、本社:東京都港区、代表:櫻本真理、以下cotree)は、株式会社LITALICOよりオンライン認知行動療法サービス「U2plus」事業の譲受を決定いたしましたのでお知らせいたします。事業譲受日は2018年4月1日を予定しております。
こんにちは、一般社団法人Healthcare Opsの小迫です(弊法人が運営しているブログメディアが本ブログ"Healthcare Compass")。
LITALICOの運営する認知行動療法をベースにしたうつ病コミュニティ「U2plus」が閉鎖するというニュースを耳にしていました。その矢先に、株式会社cotreeに事業を譲渡するというニュースが飛び込んできました。cotreeについて、「Digital Healthベンチャーを調べてみた」シリーズでちょうど調べていたところだったので、個人的にとてもうれしいニュースでした。
ニュースを受けて、U2plusとcotreeがどんなサービスかをまとめてみます。
U2plus
U2plusとは、認知行動療法をベースにしたうつ病コミュニティサイトです。
どうしてうつ病に認知行動療法を利用するかについては、ホームページにわかりやすい説明がありました。
(参照:https://u2plus.jp/)
提供しているサービス内容(ホームページから抜粋)
- FunCan: できたこと[Can] 楽しめたこと[Fun] を思い出して、毎日、記録します。自分ができること、楽しめることを、探すようになります。
- U2サイクル: うつ病から抜け出すための地図を作ります。
- コラム:何かつらいことがあったときに、そのできごとに加えて、自分の考えかたを書き込みます。
- 励まし合い:ユーザー同士でアクティビティを共有します。他の人の書き込みを参考にしたり、励まし合うことができます。
ホームページを見る限り、医学的にも証明されたアプローチでうつ病の人へ適切なサービスを提供している素晴らしいものだと感じました。
ただ、サービスをクローズする意思決定を一度していることからもわかるとおり、マネタイズのポイントが非常に難しい割に、ユーザーの書き込みが増えデータ量やプライバシーへの対応へのコストが雪だるま式に増えていく構造が考えられました。
cotreeとは?
cotreeは、オンラインカウンセリングサービスを提供する会社です。具体的に2つのサービスがあるようです。
- パートナーシップ・プログラム
- ビデオ/電話カウンセリング
それぞれホームページからサービス内容を抜粋すると
パートナーシップ・プログラム
- あなた専属のパートナー(カウンセラー・コーチ)に、期間内は無制限のメッセージで相談できます。
- あなたのメッセージに対し、パートナーは24時間以内を目安に返信します。
- あなたの悩みや今の状態を整理した上で、目標を設定し、行動・思考パターンを変えていくサポートを行います。
- 必要に応じて専門の教材や診断テストを活用しながら、問題解決や目標達成を目指します。
- いつでもどこでも、気がついたときにスマホやPCから投稿できます。
- 人と話すのが億劫に感じたり、話をすることに抵抗がある場合にも誰にも知られず利用できます。
ビデオ/電話カウンセリング
- 相談内容や時間帯からカウンセラーを選び、予約します。
- 1回45分間
- 夜間も対応。web上で当日予約も可能です。
- ビデオ通話システムや電話を使って自宅で受けられる
- 誰にも知られずに受けられる
- 自分に合ったカウンセラーが見つかるまで何度でも試すことができる
- 音声・ビデオ通話に対応
単純な比較ですが、以下の違いがあるようです。
|
パートナーシップ・プログラム |
ビデオ/電話カウンセリング |
コミュニケーション |
メッセージ |
音声/映像 |
期間 |
1週間、1ヶ月、3ヶ月 |
1回45分 |
cotreeのすごいところ
わたしが思うcotreeのすごいところは、コメディカルの分野に新しい働き方を提示したことだと思います。
cotreeで人材募集している職種に、臨床心理士・キャリアコンサルタント・産業カウンセラーがあります。その中でも臨床心理士は、病院で勤務する場合「コメディカル」として働くことが多いですが、cotreeを通して働くことで実際に勤務せずとも働けるという新しい選択肢が生まれます。
(筆者作成)
2012年にブレイクした書籍「ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉」で、医師はいずれ、VRやARの技術によって世界中どこでも手術を提供できるようになる話が紹介されていました。
いままでは、テクノロジーの発達よって働き方が大きく変わるのは医師だけだろう、と思っていましたが、cotreeはコメディカルの職種にも、新しい選択肢を与えたと私は考えています。
規模の拡大
厚労省のデータによると、平成23年(2011年)の時点で精神疾患の患者数は320万人。そのうちうつ病は約96万人います。
(参照:精神疾患のデータ|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省)
また、厚生労働省が、2016年4月に「ストレスチェック制度の施行を踏まえた当面のメンタルヘルス対策の推進について」の通達を出したことで、従業員50名以上の全事業場でストレスチェックの実施が義務化されました。
企業のメンタルヘルス対策の上位3つは、「長時間・過重労働」(23.4%)、「うつ病などの精神疾患」(22.2%)、「ハラスメント」(12.7%)となり、法人向けのカウンセリングのニーズが今よりも高まると予想されます。(参照:2016年、メンタルヘルス関連市場を166億円と推計。 | メディカルコミュニケーション オンライン)
事業譲受することでのcotreeのメリット
精神疾患の患者が増え、企業側のメンタルヘルス対策の重要度が増す中で、法人向けメンタルヘルスサービスも提供しているcotreeは、U2plusを譲受することで以下の世界が実現できるのではないか?とわたしは考えました。
(筆者作成)
まとめ
- cotreeがオンライン認知行動療法サービス「U2plus」事業の譲受
- U2plusは、認知行動療法をベースにしたうつ病コミュニティサービス
- cotreeは、オンラインカウンセリングサービスを提供
- cotreeは、コメディカルの一職種である臨床心理士の働き方を大きく変える可能性がある
- 今回の事業譲受で、cotreeは利用者のニーズや重症度に応じてサービスの提供し分けることができ、バックにいるカウンセラーを統合することで人材の確保・拡充ができるかもしれない
参照
- https://www.value-press.com/pressrelease/196179
- https://cotree.jp/
- http://cotree.co/expert_recruit/
- https://u2plus.jp/
- http://amzn.to/2DBqIYd
- http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html
- https://www.medical-comm.jp/news/874
最後に
事業うんぬんとか、事業譲受のメリットとか、つらつら書いてみましたが、純粋に意義のあるサービスをcotreeさんが「うちが引き取ります!」って手を上げてたことが、めちゃくちゃかっこいいです。
病気を軽くしたり治したりすることが目的なので、ワンストップで1社が提供できることが想像できるのも、うれしいです(予想なので、実際どうなるかはわかりません)。
先日、記事の更新は毎週水曜日と日曜日にします!とFacebook上で宣言したのに、勢いで書いてしまいました。