Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

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診療報酬改定を読む⑥:末期心不全への緩和ケア診療

こんにちは、編集部Mです。 2018年度の診療報酬改定の概要が決定し、毎日様々なニュースが出てきています。 このブログでも、2018年度改定で気になる項目を取り上げて解説していきたいと思います。

第6回のテーマは、「末期心不全への緩和診療」です。

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緩和ケア診療加算とは?

緩和ケアの定義

2002年に、WHO(世界医療保健機関)が下記のような定義を出しています(参照:http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000185125.pdf)。

生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことによって、 苦しみを予防し、和らげることで、QOLを改善するアプローチである。

この定義に沿って、身体症状及び精神症状の緩和を提供することを診療報酬として評価したものが「緩和ケア診療加算」になります。

算定点数

1日につき、400点の算定が可能です。

いままでの算定の対象患者

対象患者ですが、28年度以前の診療報酬までは「一般病床に入院する悪性腫瘍又は後天性免疫不全症候群の患者のうち、疼痛、 倦怠感、呼吸困難等の身体的症状又は不安、抑うつなどの精神症状を持つ者」と定義されていました。つまり、緩和ケア診療を行うことで診療報酬を算定できる疾患は、「がん」と「エイズ」の2つのみ、とされていました。

A226-2 緩和ケア診療加算(1日につき) - 平成28年度診療報酬点数 | 今日の臨床サポート

 

2018年度改定における緩和ケア診療加算の変更点

末期心不全も緩和ケア診療の対象に

2018年度の診療報酬改定では、緩和ケア診療の対象疾患として、この2疾患に加えて新たに「末期心不全」が追加されています。以下は、中医協資料からの抜粋です。

基本的な考え方

進行した心不全の患者に対する緩和ケアを評価する観点から、緩和ケア診療加算及び有床診療所緩和ケア診療加算について、末期心不全の患者を対象に追加する。また、緩和ケア診療加算について、がん患者に対する栄養食事管理の取組を評価する。

 2018年度診療報酬での算定要件

一般病床に入院する悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群又は末期心不全の患者のうち、疼痛、倦怠感、呼吸困難等の身体的症状又は不安、抑うつなどの精神症状を持つ者に対して、当該患者の同意に基づき、症状緩和に係る専従のチーム(以下「緩和ケアチーム」という。)による診療が行われた場合に算定する。 

末期心不全に対する緩和ケア診療の対象患者

「末期心不全の患者」は、以下のアからウの基準に該当し、エからカまでのいずれかの基準に該当するもの、とされています。

  • ア:心不全に対して適切な治療が実施されていること
  • イ:器質的な心機能障害により、適切な治療にかかわらず、慢性的にNYHA重症度分類Ⅳ度の症状に該当し、頻回または持続的に点滴薬物療法を必要とする状態であること
  • ウ:過去1年以内に心不全による急変時の入院が2回以上あること
  • エ:左室駆出率 20%以下である場合
  • オ:医学的に終末期であると判断される場合
  • カ:エ又はオに掲げる場合に準ずる場合

病院側では、「ア~ウの条件をレセプト上で正しく説明できるか?」がこの加算を算定をする上では重要になりそうです。

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考察

「末期心不全への緩和ケア診療は、社会的にどのようなニーズがあるのか?」という視点から考察をしてみようと思います。厚労省で「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ」という検討会が立ち上がっており、その資料を抜粋しつつ簡単に述べてみます。

参照:循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ |厚生労働省

終末期に緩和ケアを必要とする疾患の1位は心血管疾患

日本では、緩和ケア(≒ホスピス)と言えばがんというイメージですが、WHOの研究によると、人生の最終段階に緩和ケアを必要とする者の疾患別割合で見た場合、1位は心血管疾患で38.47%、2位ががんで34.01%という結果が出ているようです。(出典:Global Atlas of Palliative Care at the End of Life (WHO, January 2014))

また高齢者の心不全疾患は年々増加しています。慢性心不全患者の管理体制として、かかりつけ医等の総合的診療を中心に、専門的医療を行う施設が急性増悪時の入院治療を行い、多職種チームによる疾病管理等で連携・支援する体制の検討が必要でとされてるようです。

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 このような背景から、「末期心不全で入院した患者に緩和ケア診療を」という提言が、日本の病院にも出てきたのではないかと考えられます。

末期心不全への緩和診療は実現可能か?

今回の診療報酬改定による診療の質向上を実現するためには、以下の2点を確認する必要があります。

  • 現在の日本の医療機関に、心疾患と緩和ケアを同時にできる体制があるのか?
  • 緩和ケアを行っている病院に、心疾患の患者はどれほどいるのか?

その疑問には厚労省の下記の資料が答えています。

300床以上の病院についてみた場合、

  • 緩和ケアチームを有する施設の内、循環器内科または心臓・血管外科を標榜している施設数は714施設中682施設ある。
  • 外来患者総数の、5%は心疾患の患者である。

となっています。

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つまり、緩和ケアチームを有する医療機関のほとんどで心疾患の治療をおこなうことでき、病院の外来にかかる患者の5〜8%が心疾患を患っており「入院になる患者群」の需要も見込めそうです。

 

まとめ

  • 2018年度の診療報酬改定で、緩和診療加算の対象疾患に末期心不全が加わる
  • 高齢者の心不全疾患は年々増加しており、特に終末期の患者に対する緩和診療のニーズが高まりを見せている。
  • 緩和ケアチームを有する医療機関のうち、ほとんどが心疾患の治療も行っており、加算の対象となる患者も多く存在することが見込まれる。

今回の改定では、終末期における診療の質向上のカギを握ることになりそうです。「末期心不全を対象とした緩和診療がどの程度定着するのか」「それにより終末期のQOL(Quality of Life)がどのように向上していくのか」に注目していきたいです。

 

 

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