Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

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診療報酬改定を読む③:抗菌薬の適正使用の推進

こんにちは、編集部Mです。

2018年度の診療報酬改定の概要が決定し、毎日様々なニュースが出てきています。

このブログでも、2018年度改定で気になる項目を取り上げて解説していきたいと思います。第3回のテーマは、「抗菌薬の適正使用の推進」です。

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風邪に抗生物質は効かない?

今回診療報酬に追加される「抗菌薬の適正使用の推進」を理解するにあたり、まず風邪って何?、抗生物質って何?、という点を理解する必要がありそうです。「風邪」をWikipediaで調べてみると、次のような一文がありました。

 ウイルスによる上気道感染症であり、主な影響は鼻に現れる。(中略)治療法は存在せず、罹患期間を短縮させる方法もないが、症状は緩和可能でありイブプロフェンなどのNSAIDsは助けとなるであろう。根拠によれば、抗生物質は使用すべきではなく、総合感冒薬の使用も支持されない。

 

「なぜ抗生物質を使用すべきではないのか?」という点については、次のような記載がありました。

抗生物質(狭義の抗菌剤)は抗細菌作用しか持たないため、風邪の8~9割を占めるウイルス感染によるものには効果が無い。また、安易な抗生物質の投与は耐性菌の出現を助長する。

 

ここから読めることとして、以下の二点が挙げられます。

  • 風邪はウイルスが引き起こす症状であるため、抗細菌作用のある抗生物質を処方してもウイルス感染を治療する効果がないこと
  • 安易な抗生物質の投与は耐性菌の出現を助長すること。

 

「耐性菌」とは、薬への耐性を持った細菌のことをを指します。抗生物質を使い続けていると、薬に対する細菌の抵抗力が高くなり、治療に有効な抗生物質が将来無くなる事態が懸念されます。このため、日常処方での不要な抗生物質は控える必要があります。
いまから約1年前の厚生労働省の会議でもこの話題が審議されていたようで、それが2018年度の診療報酬改定に盛り込まれた、と捉えることができます。

 

「抗菌薬の適正化の推進」に関して新設された項目

やや前置きが長くなりましたが、それでは新設された項目の詳細を見ていきたいと思います。なお、引用文は第389回中医協資料の総‐1に記載されている「個別改定項目について」を参照しています。

新設項目名

小児抗菌薬適正使用支援加算 80 点

算定要件

急性上気道感染症又は急性下痢症により受診した小児であって、初診の場合に限り、診察の結果、抗菌薬投与の必要性が認められず抗菌薬を使用しないものに対して、抗菌薬の使用が必要でない説明など療養上必要な指導を行った場合に算定する。
なお、基礎疾患のない学童期以降の患者については、「抗微生物薬適正使用の手引き」に則した療養上必要な説明及び治療を行っていること。

今回の新設項目は、基本の診察料の他に、診察時に必要な説明をした場合に可能な項目、という位置づけになります。つまり、抗菌薬の適正使用に関する指導は必須ではなく、この加算を算定するかどうか(病院/クリニックとして説明をするかどうか)は各医療機関にお任せとなっています。

施設基準

感染症の研修会等に定期的に参加していること。
病院においては、データ提出加算2を算定していること。

施設基準はこんな感じです。ここがネックになることはあまりないと思われますが…。

 

考察

対象患者は小児だけ?

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今回の加算の対象は、「急性上気道感染症又は急性下痢症により受診した小児患者」に限定されています。成人も含めて患者全体に広げるのではなく、まずはこれから病院の外来にかかる小児患者に耐性菌が発生することを防ぐ仕組み作りから、ということなのでしょうか。

診療報酬の値段は適切か?

この加算を算定することで得られる点数は80 点(800円)です。病院やクリニックによって対象患者の数は異なるのかもしれませんが、説明に割く時間や手間暇の割に経営面へのメリットがどの程度あるのか、試算が必要かもしれません。(「抗生物質を出してください!」と強く要求するご両親もいることが予想されます…)

患者への説明と記録の残し方は?

中医協資料の「具体的な内容」にこんな一文がありました。

再診料の地域包括診療加算若しくは認知症地域包括診療加算、地域包括診療料若しくは認知症地域包括診療料、薬剤服用歴管理指導料又は小児科外来診療料若しくは小児かかりつけ診療料を算定する場合は、抗菌薬の適正使用に関する普及啓発に努めていること及び「抗微生物薬適正使用の手引き」に則した治療手順等、抗菌薬の適正使用にする診療を行うことを要件として追加する。

2017年9月に、「抗微生物薬適正使用の手引き」なる冊子が既に作成済みのようです。

医療機関によって異なる診療や説明を行うのではなく、厚労省の作成した治療手順に沿って診断・説明を行うこと、そしてそれを記録にわかるようにしておくこと、の二点が算定の根拠として重要になりそうです。

 

入院版も

今回は外来に絞ってご紹介をしましたが、実は入院版の抗菌薬の適正使用の推進の算定項目も新設されています

新設項目名

抗菌薬適正使用支援加算 100 点

算定要件

院内に抗菌薬適正使用支援のチームを設置し、感染症治療の早期モニタリングとフィードバック、微生物検査・臨床検査の利用の適正化、抗菌薬適正使用に係る評価、抗菌薬適正使用の教育・啓発等を行うことによる抗菌薬の適正な使用の推進を行っていること。

こちらの方が医師だけでなく多職種での取り組みが必要になってきますが、全入院患者に対して算定できるのであれば、経営へのプラスの影響が大きくなりそうです。

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終わりに

今回の話をまとめると

  • 風邪に抗生物質を処方しても効果はありません。
  • 薬への耐性を持った細菌「耐性菌」を増やさないためにも、無駄な抗生薬の処方はすべきではありません。
  • 抗生薬の適正使用が加算対象になります。
  • 外来の加算対象は、小児のみです。
  • 入院の加算は、チームを組んで多職種で取り組む必要があります。

このような草の根的な感染管理・対策への活動が診療報酬で評価されることで、日本の医療の質がどのように上がっていくのか注目していきたいです。

 

参照

 

 

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