Healthcare Compass (ヘルスケアコンパス)

ヘルスケア界隈で気になっていることを調べてみました。今後の医療の方向をわかりやすく示すブログメディアを目指しています。

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医療サービスはプロダクトアウトで考えるべきか?マーケットインで考えるべきか?(前編)

以前、飲み会の席で、

「医療機関が新しいサービスを始める際、プロダクトアウトで考えるのが良いか?マーケットインで考えるのが良いか?」について議論したことがあります。

ここで議論していたときの2つの用語の意味は、以下のとおりでした。

  • プロダクトアウト:ある診療科の有名な医師のもと、その評判を売りに患者を獲得すること
  • マーケットイン:その地域のニーズ(疾患の傾向)に即して、医療者を確保し、患者を獲得すること

医療サービスを提供する最終的は目的は「患者に適切な医療を、その医療圏で提供する」ことです。ただ提供する上での考え方として、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」を2極化して考えていいか、自分の中でとても疑問でした。

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こんにちは、一般社団法人Healthcare Ops の小迫です。いつもブログメディア“Healthcare Compass(ヘルスケアコンパス)”を読んで頂き、ありがとうございます。

今回は、マーケティングの基本概念である「プロダクトアウト」「マーケットイン」について調べてみました。他の概念もいくつか加えて、医療機関はどうサービスを立ち上げてしていくべきかについて考えてみました。

 

まずは、言葉の定義の確認

プロダクトアウト

企業が商品開発・生産・販売活動を行う上で、企業側の都合(論理や思想、感性・思い入れ、技術など)を優先するやり方。“作ってから売り方を考える方法”といえる。*1 

つまり、医師や経営層が、「◯◯な強みを活かして、新しい診療サービスを始めましょう!」と考えるのがプロダクトアウトです。

 

マーケットイン

企業が商品開発・生産・販売活動を行ううえで、顧客や購買者の要望・要求・ニーズを理解して、ユーザーが求めているものを求めている数量だけ提供していこうという経営姿勢のこと。“売れるものだけを作って提供する方法”といえる。*2 

マーケットインは、「この地域だけは出生率が増加していて、より小児に特化した診療科/サービスを開設すべきだ!」と考えて、医師や看護師、パラメディカルを集めてサービスを始める考え方です。

今回は、前編中編後編の3回に分けてまとめていきます。まずは、前編のプロダクトアウトについて。

 

プロダクトアウトの成功事例

あらためて、プロダクトアウトとは、強みを活かして、医療サービスを提供することです。プロダクトアウトとして、うまくいっている事例をひとつ紹介します。成功しているのは、「榊原記念病院」です。

榊原記念病院の強みは、循環器。

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(写真:ホームページより引用)

ホームページの挨拶文からも、強みを存分に活かして病院が開設されたことがわかります。*3

当院は、昭和52年11月、我が国の心臓外科のパイオニアの一人である故 榊原 仟 東京女子医科大学 教授が公益財団法人日本心臓血圧研究振興会の循環器専門病院として渋谷区代々木に設立したことに始まり

結果として、病院情報局の直径10キロ圏内の病院との医療圏シェアを見ても、圧倒的にNo.1を誇っています。*4

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(引用:http://hospia.jp/hoscmp/1133870086 条件:平成27年度、榊原記念病院、診療実績:循環器系、距離が近い病院)

 

プロダクトアウトのために欠かせない差別化戦略

強みを活かすことに加えて、プロダクトアウトに欠かせないのが、マイケルポーターの唱える差別化戦略です。

差別化戦略とは

特定商品(製品やサービスを含む)における市場を同質とみなし、競合他社の商品と比較して機能やサービス面において差異を設けることで、競争上の優位性を得ようとすることである。*5

差別化の方法としては以下の3つが挙げられます。

  1. 付加価値・ネームバリュー
  2. ブランド化
  3. 付加価値サービス

榊原記念病院は、故 榊原 仟 東京女子医科大学 教授のネームバリューから、循環器としてのサービス価値を高めました。さらに、循環器の疾患に関連させて、小児科、産科、人間ドックなどを提供することで、循環器疾患に特化した病院としての付加価値サービスも提供しています。

 

プロダクトアウトの危険性

ただし、病院やクリニックの経営において、プロダクトアウトを極端に考えてしまうと以下のことが起きてしまう危険性があります。

前提:その医療機関の目的は「患者に適切な医療を、その医療圏で提供する」ことです。

プロダクトアウトを極端に考えた場合
ある病気を羅患する人がほとんどいないところに医療サービスを提供すると、その病気を対象とする患者が存在しません。そうすると地域外から必死に呼び込む必要が出てきて、地域の健康アウトカムにはプラスになりません。

強みがあるからといって、ニーズのないところにサービスを提供しても医療機関の経営としては成り立たないというのも心がけて置く必要があります。

 

前編プロダクトアウトのまとめ

医療サービスにおけるプロダクトアウトについて、今回は調べてみました。プロダクトアウトな思考で医療サービスを提供するとしても、もちろん、患者さんや地域のニーズと連携しながら、強みをがマッチしていくことが大前提です。

ただ、シンプルにプロダクトアウトについてまとめるならば、

  • 強みを活かして、医療サービスを提供する
  • うまくいっている病院は、強みとともに差別化戦略を取っている
  • 患者が存在しないのに、サービスを提供を始めるとその医療圏の健康には寄与しない危険性がある

といえます。

(Edit:編集部M)

 

参照

  1. 情報システム用語事典:プロダクトアウト(ぷろだくとあうと) - ITmedia エンタープライズ
  2. 情報マネジメント用語辞典:マーケットイン(まーけっといん) - ITmedia エンタープライズ
  3. 榊原記念病院 公式Webサイト
  4. 病院情報局 http://hospia.jp/hoscmp/1133870086
  5. 差別化戦略 - Wikipedia

 

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